ブルガリのピンクダイヤモンドリング、イタリアオークションで史上2位の高値

ブルガリのピンクダイヤモンドリングが、今月8日、イタリア・トリノのオークション、アステ・ボラッフィ(Aste Bolaffi)のファイン ジュエルズオークションにおいて、230万ユーロ(約3億9千万万円)という驚異的な価格で落札された。このリングは、世界的にも稀少な3.18カラットのファンシーインテンスピンク、VS2クラリティ、タイプIIaダイヤモンドを中石に据え、さらに64石、計約1.93カラットのラウンドブリリアントカットおよびバゲットカットダイヤモンドが配されている。今回のオークションで事前に設定された最高見積額は120万ユーロ(2億1千万円)だったが、実際の落札額はこれを大きく上回った。アステ・ボラッフィによれば、同社史上最高値であり、イタリア国内のジュエリー競売としても2番目の高額取引となった。

オークションは、単なる価格決定の場というだけでなく、ブランド、希少性、投資価値、グローバルな需要動向を可視化する鏡だ。ブルガリという国際的ハイジュエラーブランド、それにピンクダイヤモンドという希少石の組み合わせが、記録的価格を生み出した。

今回注目すべきは、オークションの現場においてオンラインビッダーが世界中から参加した点である。これはパンデミック以降、ジュエリー業界のみならずアートマーケット全体で進展してきた、取引のデジタル化が、価値創造と需要喚起の拡張を後押ししていることを意味する。特に高額帯や一点物の美術・嗜好品市場では、実物を見ずに巨額の取引が完結する事例が常態化しつつある。これは日本市場のラグジュアリー小売、ジュエリーサロン、競売事業者にも少なからず参考になる現象である。

また、今回のブルガリピンクダイヤリングがイタリアで記録的な高値をつけた背景には、ピンクダイヤモンドへの国際的な需要の高さがある。オーストラリアのアーガイル鉱山の閉山以降、ピンクダイヤモンドの供給は枯渇し、希少石としての価値は日増しに高騰している。ピンクダイヤの扱いに長けたブランドは国際相場を牽引、ブルガリが象徴するように、トップブランドのクラフツマンシップとデザインコンセプトが相乗的に作用し資産価値とコレクタブルバリューを生み出している。今回、VS2クラリティのタイプIIaという希少条件で3カラット超のピンクダイヤは、世界の富裕層が熱視線を送る“投資資産”にもなっている。

アステ・ボラッフィの今回の競売全体の売上は410万ユーロ(約7億2千万円)と、同社ジュエリー部門にとっても史上最高記録となった。他の注目落札品としては、10.82カラットのブリリアントカットダイヤリングが5万5000ユーロ、エメラルドカット7.02カラットのダイヤリングが4万6000ユーロ、ファンシーイエローダイヤ5.27カラットのリングが4万2000ユーロ、O.J.ペラン製の7.54カラットアンティーククッションカットダイヤリングが3万4000ユーロなどが並ぶ。カラット数だけでなく、カット、カラーグレード、ブランド、年代など複数の価値要素が結果に影響を及ぼしている。

今回の結果が日本の流通現場、ハイジュエリーサロン、オークション業界に意味するところは極めて大きい。日本国内でもインターナショナルメーカーとコラボした一点物、加えてオリジン、カラー、トータルデザイン性を徹底追求したジュエリーが投資対象、文化芸術品、あるいは人生のアートピースとして新しい需要を喚起している。加えて、グローバルマーケットと歩調を合わせた価格戦略、販路設計が重みを増しつつある。顧客層も単なる富裕層ではなく、海外の投資家、コレクター、美術愛好家が日常的に日本市場へアクセスする時代になった。

デジタル化による市場拡張、そして希少石×ブランドという組み合わせの市場価値の急騰傾向には注視が必要だ。日本のジュエリー業界も、世界水準の素材調達、デザイン創造、マーケティング、顧客体験づくりの再構築に取り組むタイミングにある。未来の競争優位は、希少石やブランド力の“買い付け”に加え、他にはない独自性やカルチャーをまとった真の“オリジナリティ”の提供にかかっている。

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