米国の50%関税が市場構造を揺るがす転換点に

2026年1月、インドと米国の間で進められている貿易交渉が大きな節目を迎えつつある。天然ダイヤモンドに課されている最大50%の米国関税が、合意成立により撤廃される可能性が浮上した。これは世界のダイヤモンド供給・流通構造に直接的な影響を及ぼす可能性がある。
1月15日、米国の新駐インド大使セルジオ・ゴア氏は、1月12日のデリー訪問中に「両国は貿易協定に向けて積極的に交渉を進めている」と発言した。インド着任からわずか数日後の公式発言であり、交渉の進展スピードを印象づけるものとなった。
同氏は、次回の交渉担当者による協議が1月13日に予定されていることを明らかにするとともに、「トランプ大統領とモディ首相の間には本物の友情があり、本当の友人は相違点を解決するものだ」と述べ、政治レベルでの関係性の強さを強調した。米国内で一部に見られる「交渉停滞の責任はインド側にある」との主張についても、インド政府が否定している点に言及し、軌道修正を図る姿勢を示した。
関税撤廃が意味するもの「事実上の市場回復」
現在、米国はインドから輸入される天然ダイヤモンドに対し、当初25%、その後最大50%に引き上げられた懲罰的・相互関税を課している。仮に今回の貿易協定が成立すれば、これらの関税は大幅に引き下げられ、天然ダイヤモンドは実質的にゼロ関税、もしくは極めて低い税率が適用される見通しである。
この点について、デビアス・グループのCEOであるアル・クック氏は、1月7日にムンバイで明確な見解を示した。
「良いニュースとして、米国は合意が成立すれば天然ダイヤモンドの関税は0%になると発表している。業界では関税が終了するとの見方が一般的だ」と述べ、関税撤廃を既定路線と捉える業界認識を明らかにした。
インド輸出への深刻な影響と是正効果
クック氏は、インド商工大臣ピユシュ・ゴヤル氏との会談後、関税導入によってインドから米国向けのダイヤモンド輸出がほぼ半減したことを認めている。これは単なる数量減少に留まらず、インドの研磨産業、雇用、資金繰り、さらには世界のダイヤモンド供給チェーン全体に歪みを生じさせた。
関税撤廃が実現すれば、インドの研磨・輸出産業の即時的回復、米国市場でのダイヤモンド価格の安定化、供給停滞による価格ゆがみの是正といった効果が見込まれる。特に米国は世界最大級のダイヤモンド消費国であり、その輸入環境の正常化は国際市場全体に波及する。
日本は直接的な当事国ではないものの、インド研磨ダイヤモンドを基盤とする国際サプライチェーンの一角に位置している。米国向け輸出の回復は、結果としてグローバルな原石・研磨石の需給バランスを改善し、日本市場における価格安定や供給確保にも間接的に寄与する可能性がある。
また、ラボグロウンダイヤモンドとの競争環境においても、天然ダイヤモンドの流通コストが正常化することは、価格以外の価値訴求(希少性・資源性・物語性)を再評価する流れを後押しすると考えられる。



コメント