合成かラボグロウンか、フランスのネーミングゲーム

ダイヤモンド業界は、人工ダイヤモンドの適切な用語をめぐって長年論争を行ってきた。一方、一般向けのジュエリー小売業者は、顧客に宝石を提示する際の透明性と情報開示をより重視すると述べる。

今月(2024年2月)初め、フランス政府がすべての人工ダイヤモンドを「合成」と表記しなければならないと表明したことで、この用語に関する議論が再浮上した。同国はまた、前に説明文を付けずに「ダイヤモンド」という言葉を使用することを、天然ダイヤモンドに限定するとした。

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業界の反応

天然ダイヤモンド業界はこの出来事を勝利として扱っている。

世界ダイヤモンド取引所連盟(WFDB)のヨラム・ドヴァシュ会長は、「天然ダイヤモンド以外のすべての石を『合成』と呼ぶよう主張したフランス政府の決定を称賛する」と述べた。

このフランス経済財務省の決定は長く綿密なプロセスを経て下された、と時計&ジュエリーイニシアチブ2030(WJI2030)のエグゼクティブディレクター兼事務局長のアイリス・ファン・デル・ヴェケンは述べた。このプロセスには、フランスの宝飾品および宝石業界を代表するフランス宝石・金細工・石・真珠連合(UFBJOP)との協議が含まれていたという。

「WJI2030はサプライチェーンの透明性と完全性を信じており、ルールや規制は常に遵守されなければならない」とファン・デル・ヴェケンは述べ、「製品特性の開示は、消費者の信頼にとって重要な要素だ。」と指摘した。

デビアスのラボグロウンダイヤモンドジュエリーブランド、LIGHTBOX(ライトボックス)のCEOであるアントワーヌ・ボルドは、「フランスでは『合成』という用語が人工ダイヤモンドを表すのに一般的に使われているが、ライトボックスはフランスでは製品を販売していない」と述べた。

また、「これを『ラボグロウン ダイヤモンド』に変更することに関して疑問があったが、フランス語では適切な翻訳がない。フランスの消費者にとって合成は最もよく表現された用語で、ラボグロウンダイヤモンドに対してこの用語が使用されることに慣れている。」とボルデは述べた。「(我々は)現在消費者の間で一般的に使われている『ラボグロウンダイヤモンド』という用語を今後も使い続けるつもりだ。もちろん、これはそれぞれの言語と市場に適応する必要がある。」と説明した。

米国では、連邦取引委員会 (FTC) が「ジュエリーガイド」において、人工ダイヤモンドの販売に使用できる用語として「ラボラトリーグロウン」を承認している。また、以前許可されていた呼称の中から「合成」を削除した。ラボグロウンまたはラボラトリーグロウンは、米国および世界の多くの地域で人工ダイヤモンドを表す用語として広く受け入れられている。

小売業者の反応

ただし、一部の小売業者にとっては、用語よりも、製品を明確にし完全に伝えることが重要だ。

「卸売業者、ダイヤモンド業社、WDC(世界ダイヤモンド評議会)から世界ダイヤモンド取引所連盟に至るまでのさまざまな組織は、すべて間違った方向に取り組んでいる。それを何と呼ぶかは本当に問題ではない。私にとって、それは透明性だ。」と、ペンシルベニア州モンゴメリービルとニュージャージー州マウント・ローレルに店舗を構えるマークス・ジュエラーズの営業・研修ディレクターでダイヤモンドバイヤーのデイビッド・メイザーは語った。 「私には人々が何を購入しているのかを正確に共有する義務がある。彼らが苦労して稼いだお金がどこに使われるのかを完全に理解させるためだ。」と述べた。

ペンシルベニア州フィラデルフィアのサフィアン&ルドルフ・ジュエラーズのリッチ・ゴールドバーグは、「最終的には顧客が自分にとって何が最善かを決める。」と述べた、

「私たちの業界の多くの人は、これらの人工ダイヤモンドを何と呼ぶべきかということに囚われすぎていると思う。私の考えでは、それはあまり重要ではない。私は個人的にスタッフをトレーニングして、まず顧客を教育し、天然とラボグロウンの違いを理解できるようにしている。私たちは透明性と信頼の構築に重点を置いている。顧客は(自身が)望むものを選んで買うことができる。」とゴールドバーグは述べた。

2021年に、自社のジュエリーに人工ダイヤモンドのみを使用すると発表して話題になったデンマークのジュエリーブランド、パンドラは、ラボグロウンダイヤモンドという用語を好んで使用している。

パンドラのサステナビリティおよびコミュニケーション担当シニアバイスプレジデント、マッツ・トゥーミー・マドセンは「ダイヤモンドは、地上の施設で成長したものであろうと、地中から産出されたものであろうと、ダイヤモンドである。」と強調した。「ラボグロウンダイヤモンドは採掘されたダイヤモンドと同じだ、地上で成長する。冷凍庫の氷が偽物ではなく、自然の氷と同じであるのと同じだ。これは、ラボグロウンダイヤモンドは合成や偽物ではなく、本物のダイヤモンドであると述べている米国連邦取引委員会などの主要機関によって支持されている。ラボグロウンダイヤモンドを『合成』と呼ぶのは誤解を招くだろう。」と述べた。

ジョージア州マリエッタにあるデビッド・ダグラス・ダイヤモンド&ジュエリーのダグラス・メドウズは、人工ダイヤモンドをラボグロウンと呼ぶことを好んでいる。他のジュエラーと同様、彼は天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの両方を販売している。同氏は、米国でダイヤモンドに対して一般的に使用されるこの2つの用語(天然、ラボグロウン)は、それらを適切に区別していると述べた。この用語は、消費者や宝石業者にとってわかりやすくシンプルだと彼は述べる。

「ラボグロウンの名前は消費者に好評だ。」とメドウズは述べた。また、「(この用語によって)人々が何を買っているかについて混乱したという例はこれまでになかったように思う。」と説明した。

メドウズはラボグロウンダイヤモンドを早くから採用しており、ラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドの製造プロセスを視察するためにインドへ4回訪れている。「カッターの観点からはこの二つは違いがわからない。」と彼は述べた。彼は、「合成」という名前がまた使用されたり、または別の名前が使用されたりする場合の現実的な懸念を述べた。「ガードルにLAB GROWNと刻印されたダイヤモンドと、その鑑定書はどうなるのだろうか?」と彼は疑問を投げかけた。

「私はラボグロウンという言葉が好だし、それは我々にとってうまくいっている。それ以外、人々がやっていることは消費者を混乱させるだけだ。」と彼は続けた。「私は消費者に選択肢を与えることに全力を尽くしている。私は選択肢を提示し、彼らに選ばせる。私の使命は、彼らが正しい情報を確実に得られるようにすることだ。」と語った。

テキサス州ハンツビルにあるエルンスト・ジュエラーズのロバート・C・アーンスト・ジュニアも、用語の透明性と一貫性が重要であることに同意した。「合成の用語に関しては、私はコメントしない。」と彼は言った。「使用されている言葉に一貫性があることが重要だ。誰もが同じ用語を使用すれば、顧客を混乱させることはない。」と述べた。

ラボグロウンダイヤモンドの効果

エルンストはラボグロウンダイヤモンドを宣伝していないが、顧客の需要に基づいて約2年前から提供を開始している。彼も他の人たちと同じように、天然ダイヤモンドが好きだと述べた。

メイザーは宝石商の4代目でAGSの理事でもある。彼は、ほとんどの消費者にとって天然ダイヤモンドの方が良い選択であると考えている「私は天然ダイヤモンドのプロだ。」と彼は言う。「天然ダイヤモンドは消費者にとってははるかに優れた価値があると思う。それは資産性であり、ラボラトリーグロウンダイヤモンドにはそれがない。」と彼は述べた。

しかしそれでも、ゴールドバーグらは、ラボグロウンダイヤモンドはその手頃な価格により、通常は宝石を購入しないであろう若い顧客を呼び込んだと指摘した。

「数年前、業界はミレニアル世代やZ世代がダイヤモンドを買わず、旅行や住宅購入を好むのではないかと懸念していた。」と同氏は説明した。「ラボグロウンダイヤモンドは、若い世代が私たちのショールームに来て、自分たちが望む見た目のジュエリーを手頃な価格で手に入れる機会を生み出した。今、彼らはジュエリーの扉を叩いたので、一生ジュエリーの顧客になることができる。」と同氏は説明した。

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