ロシアウクライナ戦争がダイヤモンド業界に与える影響 [RAPAPORT]

世界中のダイヤモンド業界は多くの外的要因に晒されている。ロシアウクライナ戦争はダイヤモンドの供給状況に変化を与え、主に米国でアルロサの商品需要に大きな変化をもたらした。また、中国のロックダウンにより、アジアで最も巨大な小売市場での減少も見られた。アメリカ沿岸部での消費は堅調だが、一部の業者はインフレの影響を懸念している。

このような世界的情勢による外的要因の組み合わせは、ダイヤモンド業界に複雑な影響をもたらしている。ダイヤモンドの供給は減少しているが、大幅に不足しているカテゴリーは限られていると、ラパポートのダイヤモンド市場と価格の専門家であるシモン・ゲルステンサンは説明する。西側諸国によるロシアへの制裁が続くにつれ、アルロサでの生産量が多いカテゴリーの供給不足が激化するだろうと彼は予測している。

ラパポート、ジョシュア・フリードマンによるシモン・ゲルステンサンへのインタビューを紹介する。

ダイヤモンド取引に関する市場感情はどうか

世界中のすべてのマーケットで不透明感と減少が引き起こされていますが、その程度は地域によって異なります。唯一、米国だけが強力なマーケットとなっており(世界の)業界を牽引するエンジンとなっています。これは同時に懸念の原因でもあります。

ロシアウクライナ戦争は消費需要へどう影響を与えたか

この戦争が売上に影響を与えたとは思いません。しかしながら、それは消費者の意識と(社会的)責任感に大きな影響を与えました。(米国では)多くのジュエリー企業が、米国政府の制裁範囲を超えて、独自にロシアのダイヤモンド原石をボイコットしているのを見ることができます。

米国のインフレは影響があるか

(ダイヤモンドの)取引価格はドル建てのため、インフレはダイヤモンドの価格に直接影響を与えていません。しかし、米国のインフレを含む経済問題は、消費者が贅沢品に投資するための資金を減少させるため、ダイヤモンドの販売に悪影響を与える可能性があります。

中国でのロックダウンの影響について

ロックダウンは中国とのビジネスに大きな影響を与えました。 それは、ロジスティックおよび経済的な問題を引き起こし、市場の士気を低下させました。 これは、B2C、B2Bレベルの両方の取引に影響を及ぼしました。

中国人民元の弱体化による市場への影響はあるか

(ダイヤモンドの)取引国際価格はUSドルで設定されているため、(中国人民元の弱体化により)中国国内でのダイヤモンドの価格は割高になっています。しかし、依然として消費者の予算の中にダイヤモンドがあり、ダイヤモンドの販売はより安価な商品にシフトしています。

原石は不足しているか

確かに市場に出回っている原石は少ないですが、需要も多くありません。原石にクレイジーなプレミアム価格を支払うバイヤーの意欲は低下しています。ただし、3グレイナーズ(0.75ct)未満の小さなダイヤモンド原石はセカンダリー市場で再びクレイジーなプレミアム価格になっています。セカンダリー市場の価格を熟知するデビアスがメレサイズの価格引き上げをおこなっていないことに注意する必要があります。来週のサイトでデビアスがどう動くか注目しましょう。

ポリッシュダイヤモンドに関して

1ct未満のポリッシュダイヤモンドの市場在庫は減少していますが、商品が不足しているわけではありません。単に以前は市場在庫が多すぎた可能性もありますが、中国のロックダウンによって売り上げの多くが失われているために不足が生じていないという可能性もあります。不足をどのように測定するかの問題です。市場在庫を2か月前と比較しますか?または1年前でしょうか。それとも、売り切るのにかかる時間を基準にしますか?

ほとんどのカテゴリで不足は生じていませんが、0.29ct以下、特に0.15ct以下のダイヤモンドは不足しています。他に不足が発生しているアイテムは、大きいサイズのダイヤモンド(例えば1.25~1.49ct)、テーブルにブラックインクルージョンが見えないプレミアム商品、ファンシーシェイプなどのアメリカ向け商品です。

ロシアウクライナ戦争は供給状況を悪化させたか

市場にはロシアの原石がほとんどありません。小さいサイズのポリッシュダイヤモンドの不足は、ロシアに対する制裁が直接影響を与えていると言えるでしょう。ロシアの原石の供給がすぐに回復しないと仮定すると、通常ロシアが主な供給源であったカテゴリーでの供給不足が現れると予想できます。つまり、小サイズのダイヤモンド、ハイカラー、そしてスクエアやレクタンギュラなどのファンシーシェイプです。

ロシア原石の特徴について

ロシア産の原石にはいくつかの特徴があり、これはポリッシュダイヤモンドの市場在庫に大きな影響を与えています。小サイズダイヤモンドのアルロサの市場シェアは50%を超えていました。またアルロサの原石はデビアスの原石よりも平均的にカラーが高めです。また「クリスタルモデル」(正八面体に近い形状の原石)の生産が多く、これは特定のファンシーシェイプに適しています。これにより、エメラルドシェイプダイヤモンド、ラディアント、プリンセス、クッションカットなどのファンシーシェイプが不足する可能性があります。またロシア産原石は蛍光性を持つ割合が比較的高めです。

制裁の長期的な影響はどのようなものになる可能性があるか

ダイヤモンド業界の製造部門(研磨加工)で原石の供給は最も安定したものだと考えられていました。製造企業は、原石の供給が安定的で固定されているという前提に基づいてビジネスを組み立てていました。原石価格は供給元が設定していましたが、これは競合他社にとっても同じ状況であり、また供給される原石の内容は安定していたため、ポリッシュダイヤモンドの生産性についても業者には安定感を与えていました。

このサイトシステム(原石供給システム)により、企業は定期的にダイヤモンド原石の仕入れを行えるようにキャッシュフローを調整していました。これは、メーカーがポリッシュダイヤモンドの月間販売目標を持っていますが、販売価格と販売日数の適切なバランスを見る必要があることを意味します。メーカーが原石を毎月定期的に購入できなくなる場合、この価格設定と販売の戦略は変わる可能性があります。

セカンダリーマーケットで原石を購入することは、(サイトとは)全く別のゲームです。 アルロサに変わるダイヤモンド原石を探す企業はビジネスモデルを変更する必要があるかもしれません。

製造部門はロシアの原石供給不足にどのように対処しているか

アルロサによる原石供給不足は、小売市場の減速によって相殺されました。一部のメーカーにとっては完璧なタイミングと言えます。もし世界の売上が安定していれば、不足しているカテゴリーの商品はさらに不足することになります。最近インドでは夏の期間中に製造部門で(従業員に)前年よりも長い(無休)休暇を与えました。また一部の工場では(不足を補う為に)生産能力をラボグロウンダイヤモンドの生産にシフトするという選択肢もあります。

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