
英国の広告規制当局であるAdvertising Standards Authority(ASA)が、ラボグロウンダイヤモンド(LGD)の表示方法を巡り、宝飾業者2社に対して広告是正命令を下した。問題となったのは、LGDであるにもかかわらず、広告上で「diamond」という単語を単独使用し、消費者に天然ダイヤモンドと誤認させる可能性があった点だという。
今回ASAから指摘を受けたのは、香港系ジュエラーLinjerと英国のNovita Diamonds。いずれもGoogle広告やMeta広告上で、“lab-grown”などの明確な修飾語を付けずにダイヤモンド表記を行っていた。ASAは「天然か人工かは、多くの消費者にとって重要な判断要素であり、広告段階で明示される必要がある」と判断し、両社の広告掲載停止を命じた。
「Diamond単独表記」は不十分との判断
Linjer側は、「brilliant diamonds」という表現はカット形状を示したものであり、誤認を意図したものではないと主張した。一方Novita Diamondsは、「LGDも科学的・宝石学的にはダイヤモンドであり、“diamond”という表現は正当である」と反論した。
しかしASAはこれを認めなかった。
同機関は、「消費者は広告を一瞬で判断する」「クリック後のウェブサイト上で説明があっても不十分」とし、“lab-grown”、“laboratory-created”などの明確な表記を広告そのものに含める必要があると結論付けた。
特に注目されるのは、Novita Diamondsのケースだ。同社は広告文中で必ずしも“diamond”単語を直接使用していなかったが、ブランド名自体に“Diamonds”が含まれていたため、ASAは修飾語表示が必要と判断した。これは今後の広告運用実務にも大きな影響を与える可能性がある。
背景にある天然業界との対立激化
今回の申し立てを行ったのは、ナチュラル・ダイヤモンド・カウンシル(NDC)と、ロンドンダイヤモンド取引所(LDB)だった。
NDCは近年、LGD広告に対する監視姿勢を強めている。直近では、Pandoraが「LGDは天然ダイヤモンドより90%低炭素」と訴求したキャンペーンに対しても、「古い研究データに依存した不正確な比較である」と反論していた。
NDC CEOのAmber Pepper氏は今回のASA判断について、「これは消費者のための勝利である」とコメント。「消費者は人生の重要な瞬間のためにダイヤモンドを購入する。十分な情報を得た上で選択できなければならない」と述べた。
一方、LGD側では「LGDも物理的・化学的には本物のダイヤモンドである」という主張が根強い。今回の案件は、単なる広告表記問題ではなく、“ダイヤモンドとは何か”という定義論争の延長線上にあるとも言える。
英国市場で進む“透明性重視”への流れ
今回の判断で重要なのは、ASAが英国宝飾業界団体であるNational Association of Jewellers(NAJ)のダイヤモンド用語ガイドラインを参照した点だ。
同ガイドラインでは、“synthetic”、“laboratory-grown”、“laboratory-created”などの正式修飾語使用を推奨する一方、“cultured diamonds”、“cultivated diamonds”、“real diamonds”、“genuine diamonds”などの表現使用を不適切としている。
さらに、“lab-grown”や“lab-created”の略称使用にも慎重姿勢を示しており、英国市場では今後、より厳格な表記ルール運用が進む可能性が高い。
LGD市場拡大とともに高まる表示責任
世界のLGD市場は急拡大を続けている。
Rapaportによれば、米国市場ではLGDがダイヤモンドジュエリー販売数量ベースで17%を占めるまで成長している。
一方で、価格下落と大量供給が進行する中、天然ダイヤモンドとの差別化や価値訴求を巡る対立は激化している。特に広告表現やサステナビリティ訴求は、今後さらに規制・監視対象となる可能性が高い。
今回のASA判断は、単なる英国ローカルの広告問題に留まらない。LGD市場が本格的なマス市場へ移行する中で、「消費者への透明性」が世界的な業界課題になりつつあることを示している。



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