SIクラスのダイヤモンドが価格を取り戻したのは何故か

昨年の天然ダイヤモンド価格下落の最大の犠牲となったのはラウンドのSIクラスだった。しかし現在ではトレンドは反転している。

下のグラフは、1ct D〜Hのラウンドの価格推移をクラリティ毎に表示したものだ。今年に入って、クラリティの低いアイテムはクラリティの高いアイテムに比べて好調に推移していることが確認できる。対象アイテムの中でSIクラリティのダイヤモンドは、1月1日から3月12日までの期間で5%アップしており、VSクラリティは2.2%アップしている。VVSクラリティは0.4%ダウンし、IFクラリティは3.1%ダウンした下落した。このRapNetのグラフは取引希望価格を反映させたものだ。また、ファンシーシェイプは市場在庫過多により全体的にダウンしている。

これは、クラリティの低い天然ダイヤモンドからクラリティの高いラボグロウンダイヤモンドへ消費者の人気が移った2023年の価格下落の修正だ。昨年1年の間、1ct D〜H、ラウンドのSIクラスの価格は33%も下落した。そのため今年に入ってからの5%のアップは33%の下落から比較すると微々たる修正に過ぎない。しかしこの約2ヶ月での価格改善は大きなものだった。これはなぜ起きたのか、また、なぜクラリティの高いダイヤモンドのパフォーマンスは低下しているのだろうか。

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急激に下落したものはまた急激に上昇する

SIクラリティのダイヤモンドは2023年にその価値の3分の1を消失した。その為2024年に向けてベース効果(時系列データの変化・変化率を算出する際に異なる基準点を用いることによって生じる効果)が大きくなる。対照的に、同じカテゴリーのVSクラリティのダイヤモンドの価格は昨年23%下落しており、VVSとIFは両方とも20%下落していた。

ラボグロウンダイヤモンド

天然SIクラリティダイヤモンドの改善は、ラボグロウンダイヤモンドの圧力の減少を反映している。ラボグロウンダイヤモンドとの競争は依然として存在しているが、その影響は限定的になりつつある。その理由の一部は、ラボグロウンダイヤモンドの小売価格下落により、消費者にとってそれらがラグジュアリー品であると感じられなくなり、ジュエリー業者にとっての魅力が損なわれたためだ。小売業者には、最も利益が高い製品に消費者を誘導する力がある。

昨年、クラリティの低い天然ダイヤモンドが受けた損害は主に、消費者がそれと同じかそれ以下の金額でより高いカラーとクラリティのラボグロウンダイヤモンドを購入できるという事実によるものだった。SIクラスの場合、物によっては肉眼で確認できる欠陥を伴うものが存在する。

ニューヨークを本拠地とする卸売業者、ハウス・オブ・ダイヤモンドのCOO、アリ・ジェインは、「天然のVS2クラリティ以上のものを望んでいた顧客は決してラボグロウンダイヤモンドを購入しようとはしなかった。」と述べた。

価格下落と安定化の影響

前述の2つの理由に共通するのは、2023年に天然ダイヤモンドのSIクラリティの価格が大幅に下落したため、このクラスのダイヤモンドがより手頃な価格となり、消費者にとってより人気が高まったという事実だ。しかし、ジュエラーには別の考慮すべきポイントがある。過去数か月間で天然ダイヤモンドの価格が安定したことにより、ラボグロウンダイヤモンドに投資していた人々が天然ダイヤモンドに回帰するようになったということだ。

ロチェスターに本拠を置く卸売業者RDIダイヤモンドの運営担当副社長、アンドリュー・リカードは「2023年の間、価格は天然ダイヤモンドの魅力をさらに高める水準まで下がった。」と述べ「SIは戻りつつあるが、依然として経済的に参入できるカテゴリーだ。」と付け加えた。

ハイエンドブランドのダイヤモンド仕入れ控え

複数の市場関係者によると、多くのトップラグジュアリーブランドは現時点ではダイヤモンドを購入していないという。これは必然的に、これらのハイエンドブランドが好んで購入するクラリティであるIFからVVSのカテゴリーの価格に影響を与える。

ハイエンドブランドがダイヤモンドを購入しない理由は、特に中国市場での消費者需要の状況にあると考えられる。中国の消費者は米国の消費者よりも高いクラリティを求める傾向にある。また、より説得力のある説としては、G7によるロシア産ダイヤモンドの禁止によりロシア産以外のダイヤモンドの価格が上昇するのではないかとの懸念から、ハイエンドブランド各社が2023年にそれらのダイヤモンドを買いだめをしたというものだ。そして禁止の実行後、産地確認されている適切なダイヤモンドの購入が予想していたよりも簡単であることに気づき、急いで在庫を増やしていないということだ。

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