ここ数年でラボグロウンダイヤモンドの価格は大きく低下し、この5年で1カラットあたりの価格は90%低下したと言われている。一方、ラボグロウンダイヤモンドの販売量は増加しており、2023年には全ダイヤモンド販売のうち18.5%を占めた。2024年には20%を超えると見られている。
この価格低下を受けて、デビアスは宝飾用としてのラボグロウンダイヤモンドの生産中止を発表(LIGHTBOXブランド自体は継続)、デンマークのジュエラーであるPandoraは300ドルのラボグロウンダイヤモンドコレクションの展開を開始した。
ラボグロウンダイヤモンドの価格低下が歓迎される一方で、多くのブランドはラボグロウンダイヤモンドの価値の維持に努めている。ジュエリーを購入し身に着ける、または誰かにそれを贈ることの意味には「ある程度のお金を費やした」という満足感が含まれるという側面もあるためだ。
そのため、いくつかのラボグロウンダイヤモンドジュエリーブランドは商品やダイヤモンド自体に差別化を図り、高級路線に移行しつつある。2023年に設立されたフランスのラボグロウンジュエリーブランド「Unsaid」は5つの特許を持つ10カラットの指輪”Rem X”を43,000ドルで販売しており、2023年の「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞した。同社はラボグロウンダイヤモンドをカーボンニュートラルで生産しており、またリサイクルゴールド、リサイクルゴールドを使用していることをアピールしている。
同社のホームページでは「Unsaidは、太陽、空、地球の力を利用して、クリーンで完全に純粋なダイヤモンドを作成することにより、より持続可能な方法で時代を超越しています。タイプIIaに分類される、最も貴重なタイプのダイヤモンドは、格子に化学的不純物がなく、ダイヤモンド全体が炭素でできていることを意味します。」と述べられている。
また、ラボグロウンダイヤモンドでは形状、サイズを予め設定してダイヤモンドを作成できるため、革新的なデザインのジュエリーが創造できるという。
また、別のブランドは「スイス製」をポイントに自社ブランドの差別化を図ろうとしている。スイスを拠点とするジュエリーブランド、「LOEV」だ。同社は時計の分野でブランドとして認知されている「Made in Swiss」の力が自社ブランドの差別化につながると考えている。
同社はラボグロウンダイヤモンドメーカーであるAmmilと協力し、初の”Made in Swiss”ラボグロウンダイヤモンドジュエリーブランドとなった。同社は完全な再生可能エネルギーを使用してラボグロウンダイヤモンドを生産している。Ammilのラボグロウンダイヤモンド工場はスイスのムオッタタールにあり、CVDプロセスにより生産されている。スイスで成長したラボグロウンダイヤモンドはカットされ、その後研磨のために一度インドへ送られるという。研磨が完了したダイヤモンドはまたスイスのLOEVに返送され、ジュエリーへと加工される。「このプロセスには時間がかかります。いずれ全てのプロセスをスイスに移行したいと考えています。」と、Ammilのオペレーション・ディレクターであるジェイムズ・ジョンソンは説明した。
また、プロセスの透明性をブランディングする動きもある。スワロフスキーは自社のラボグロウンダイヤモンド「Swarovski Created Diamonds」を発表。これは完全に再生可能なエネルギーを使用して成長させたとしており、その証明としてそれぞれのダイヤモンドに刻印を入れている。つまりスワロフスキーは自社のダイヤモンドそのものを差別化しブランド化しようとしているのだ。
ラボグロウンダイヤモンドはそのジュエリーをブランド化し差別化し価値を高めようと労力を費やしているが、実はこれは天然ダイヤモンドでも、または他のラグジュアリー製品でも同じことだ。天然ダイヤモンドであっても差別化やブランディングなく付加価値をつけるのは難しいだろう。ラボグロウンダイヤモンドが広く普及し一般的になっていくにつれて、いずれにしても素材、ブランド、理念の差別化が必要になってくるだろう。
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