
売上高約1兆8,880億円、純利益約1,801億円と過去最高を記録
中国最大級のジュエリー企業である Chow Tai Fook Jewellery Group(周大福)は6月11日、2026年3月期(2025年4月~2026年3月)の通期決算を発表した。
売上高は943億9,800万香港ドル(約1兆8,880億円)で前年比5.3%増、営業利益は188億5,000万香港ドル(約3,770億円)で同27.8%増、親会社株主に帰属する当期純利益は90億400万香港ドル(約1,801億円)で前年比52.2%増となり、過去最高益を更新した。
粗利益率は前期の29.3%から32.3%へ上昇し、営業利益率も20%に達した。自己資本利益率(ROE)は28.4%となり、過去5年平均を大きく上回った。
世界的な金価格高騰や景気減速の影響が続くなか、中国ジュエリー市場において同社が高収益体制への転換を実現したことは注目に値する。
「量」から「質」へ ブランド転換が収益構造を変える
周大福は近年、「店舗数拡大モデル」から「ブランド価値向上モデル」への転換を進めている。
同社は若年層顧客の獲得や高価格帯商品の販売強化を目的として、店舗体験の刷新、デジタル施策、文化的ストーリーテリングの強化を進めてきた。こうした取り組みは、国際的な高級ブランドが採用するラグジュアリーマーケティング手法に近いものとなっている。
その成果として、固定価格型ジュエリーやオリジナルコレクションの販売比率が上昇し、利益率改善につながった。
2026年春に発売した新シリーズ「万相(Wan Xiang)」は発売から約2か月で小売売上高5億香港ドル(約100億円)を突破。中国本土および香港・マカオ市場では購入者の20%以上が新規顧客であったという。
また、同社は元 Hermès 中国クリエイティブディレクターの謝鼎鴻氏をグローバル・クリエイティブディレクターに起用。ブランド表現力の強化にも力を入れている。
高級イメージ店舗が平均の8〜10倍の生産性
周大福が現在最も力を入れているのが店舗改革だ。
2026年2月には香港・尖沙咀の広東道に約1万平方フィート(約930㎡)のグローバル旗艦店を開業した。同店舗にはブランドの歴史を紹介する展示空間も設置されている。
さらに中国本土では新コンセプトによる高級イメージ店舗を8店舗展開している。
これらの店舗は平均店舗と比較して8〜10倍の売上生産性を記録しており、特に定価販売ジュエリーの販売比率が大幅に向上しているという。
新規出店についても従来の大量出店ではなく、厳選した好立地への出店を進めている。開店から2年未満の店舗の平均月間売上は約160万香港ドル(約3,200万円)となり、前年同期比57%増を記録した。
同社は2030年度までに中国本土における高級イメージ店舗を現在の8店舗から50店舗へ拡大する計画を掲げている。
海外展開を加速 次の成長市場は東南アジアと中東
周大福は中国市場依存からの脱却も進めている。
2026年度には、シンガポールの Jewel Changi Airport 、タイの Siam Paragon 、オーストラリアの Westfield Sydney へ新型店舗を出店した。
海外店舗数は63拠点まで増加しており、2027年度には東南アジアと北米でさらなる出店を計画している。さらに今後2年間で中東市場進出の可能性も検討するという。
中国国内のジュエリー需要が成熟期に入るなか、海外事業の成長は今後の企業価値向上において重要なテーマとなる。
「ジュエリー企業」から「ライフスタイルブランド」へ
周大福はジュエリーの枠を超えた事業展開にも着手した。
2026年度には高級ライフスタイル事業「周大福Home」を立ち上げ、フランスの高級磁器ブランド Bernardaud と共同でテーブルウェアを発売した。
さらにヘアアクセサリーや時計用ストラップアクセサリーなどを展開する「周大福Accessories」も開始している。
IPコラボレーションも積極的に推進しており、中国ゲーム「黒神話:悟空」、ディズニー、Chiikawa、NBAなどとの協業を実施。関連商品の新規会員比率は35〜55%に達し、若年層顧客の獲得に成功している。
特に「黒神話:悟空」シリーズでは男性顧客比率が大幅に上昇したという。
ラグジュアリー化とブランド投資が成長の鍵
周大福の2026年度決算は、単なる業績回復ではなく、中国発ジュエリーブランドが世界的ラグジュアリーブランドへの進化を目指す過程を示している。
近年のジュエリー市場では、金価格高騰による重量販売型ビジネスの限界が指摘される一方、ブランド価値やデザイン、文化的ストーリーを付加した高付加価値商品の重要性が増している。
店舗数を減らしながら利益を拡大し、高価格帯商品の比率を高め、海外市場へ進出する周大福の戦略は、他の宝飾業界プレイヤーにとっても大きな示唆を与えるものといえる。
同社は2030年までに国際事業売上を倍増させ、海外店舗数を100店舗超へ拡大する目標を掲げている。創業100周年を迎える2029年を前に、中国最大のジュエリーブランドが次なる成長ステージへ踏み出そうとしている。



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