中国ジュエリー企業、聖闘士星矢とコラボで黄金聖衣を販売

販売価格88万元(約1,760万円)—「子供の頃から黄金聖衣を持つのが夢だった」—

中国市場での若者の金ブームの中、老舗のゴールドジュエリー企業が次元を超えるコラボに挑戦している。現在中国では二次元IP(知的財産)との共同企画を通じて、「痛文化」の概念を取り入れた「痛金」とも称される新しいトレンドが登場している。

老舗ジュエリーメーカー、老鳳祥(Lao Feng Xiang)は最近『聖闘士星矢』とのコラボ商品を発表し、価格3999元(約8万円)の黄金聖衣箱を模したチャームや、3580元(約7万円)の黄金聖衣ペンダントなどを展開。価値が高くても真のファンの購買意欲は衰えない。

近年、老鳳祥は『崩壊:スターレイル』や『機動戦士ガンダムSEED』など、様々なアニメやゲーム作品とコラボしている。ChinaJoy(中国国際デジタルエンターテインメント展示会)では、1㎏の黄金製ガンダム「フリーダムガンダム」が大きな話題を呼んだ。

黄金のコラボ商品を購入する理由は、資産価値なのか。それとも感情に価値があるのか。「痛金」が市場の新たなトレンドとなるのかが問われている。

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88万元の黄金フィギュアが飛ぶように売れる

4月25日、老鳳祥と『聖闘士星矢』のコラボイベントが開始され、関連店舗では写真撮影や限定グッズの配布、4月30日から公式販売される商品を事前に見ることや予約が可能となった。これは多くのコンセプトストアにおけるIPコラボ企画と似た手法だ。

日本の漫画家・車田正美による『聖闘士星矢』は、古代ギリシャ神話を背景に1986年から連載され、瞬く間に世界中で人気を博した。アニメ版は1980年代末に中国に輸入され、70年代、80年代生まれの人々の子供時代の思い出と化している。「アニメの黄金聖衣と金のジュエリーのコラボは、子供の頃から憧れだった夢の実現である」という。

老鳳祥の旗艦店では、今回のコラボ商品が棚に並ぶと早速顧客からの問い合わせが殺到、インフルエンサーが店を訪れビデオを撮影する姿も見受けられた。中年の外国人観光客のカップルも同店を訪れ、黄金聖衣を詳しく観察した。

星空をモチーフにした展示ケースの中に飾られたこれらのコラボ商品は、古代ギリシャ調の柱の飾りと相まって、従来の老鳳祥の金製品と大きく異なる。2.5グラムの黄金聖衣箱チャームは12の星座に対応して全12種、2グラムの黄金聖衣ペンダントは12星座に加えてアテナバージョンも追加され、共に1000個限定。購入にはデポジットが必要で、4月30日の発売日まで現物を受け取ることはできない。

「コラボ商品は通常の商品より価格は高めで、大量生産はしない」と商品を整頓する店員は語り、「買われるのは金ではなく、情熱である」と述べた。

現在、金の店頭販売価格は1グラムあたり1000元(約2万円)を超え、店内に客は少ないものの、店員は今回のコラボ商品に自信を見せる。「この朝商品が到着したばかりで、すでに12個のうお座の黄金聖衣箱チャームを予約した顧客がいる」という。また、「実物を見ないまま冒険的に買う人もいる」と続ける。「聖闘士星矢」を見て育った世代である彼女はストーリーに精通しており、顧客が商品を選ぶ際に、各キャラクターの魅力を的確に伝えている。「もしどれを選べばいいか迷っているなら、アテナをおすすめする」と彼女は述べる。

そう話しているうちに、夫のために12個すべての聖衣箱チャームを予約しに来た人が現れた。合計金額は4万7千元(約94万円)以上だ。「主にコレクション目的で購入する。真のファンにとっては、高くは感じない。以前、老鳳祥のガンダムコラボ商品を購入できなかったことを悔やんでいた」とその女性は述べた。

今回のコラボには、世界限定30個の666グラムの牡羊座、乙女座の黄金フィギュアも含まれており、価格は88万元。それでも前回同様の価格帯であったガンダムとのコラボフィギュアが即完売したため、売れるのに時間はかからないと見られる。

今、老鳳祥では他にもEggy Partyシリーズやディズニーとの多くのコラボ商品が販売されており、純金のブレスレットやゴールドカードなど様々なアイテムが数百元から千元以上の価格帯で揃っている。これらのコラボジュエリーの多くは全て費用込みの価格であり(中国の一般的なゴールドジュエリー価格は金と加工費に分かれている)、複雑な伝統技術を用いた金製品に比べて、加工費が安い。多くのネットユーザーたちは、今回の『聖闘士星矢』コラボ金製品の価格を「良心的」と評価し、黄金は「もっとも堅実な周辺アイテム」であると述べている。

昨年、老鳳祥がmiHoYoの『崩壊:スターレイル』とコラボして発表した「丹恒·飲月」黄金ブレスレットやゴールド星軌チケットもプレイヤーから好評を得、当時1グラムあたり899元であったゴールド星軌チケットは現在、中古市場では1200元以上の価格で取引されている。

老舗ブランドの新潮流への挑戦

上海老鳳祥有限公司銀器工場副工場長であり、中国の無形文化遺産「金銀細工」製作技芸の六代目継承者である沈国興は、老鳳祥と「聖闘士星矢」のコラボレーションに注目している。「老舗ブランドが若者を引き寄せるためには新しい活力とファッション感を注入する必要がある」と彼はコメントしている。近年、老鳳祥は多くのゲームやアニメ企業と協力し、ブランド間の「強力な連携」を通じて、若いユーザーにアプローチしようとしている。「ゲームやアニメなどの二次元IPには多くのロイヤルティの高いファンがおり、これらは現代の若者に愛される文化タイプだ」と沈国興は述べる。伝統的な手工技術と現代的なデザイン理念を結びつけることで、ゴールドジュエリーブランドの多様化が促進されるのだ。

沈国興は57歳で、1987年から老鳳祥に入り、すでに38年この業界に従事している。「初めは主に金銀の美術品を製作し、そのほとんどが東南アジアへ輸出された。その後、国内市場が拡大し、電鉱鋳造などの新技術が登場した。中国人は伝統的に金の特有の色を好み、またその価値安定性を好む」と彼は語る。老舗ブランドが持続的に発展するためには、各時代のトレンドに追随し、時代の市場環境に適した金製品を提供する必要がある。「以前は十二支が流行り、今は国潮、民族風、二次元が流行している」と彼は述べる。さらに、「黄金ブームと共に、多くの若者が金を買い求め、単なる結婚や記念日などの節目の消費品にとどまらなくなっている」と強調した。したがって、若者の美意識に合った作品をより多く提供する必要がある。

2024年、沈国興はゲーム『原神』とのコラボで、伝統的な「金銀細工」技術を用いて、ゲームに登場する空中に浮かぶ宮殿「群玉閣」を再現し、これは全てを純金で作り上げるのに半年以上を費やした。「最も伝統的な手工技術を用いてゲームのシーンを製作することは、私にとっても学びの機会であり、挑戦だった」と彼は振り返る。「私はこのゲームを詳しく調べ、その色彩やキャラクターデザイン、物語に多くの魅力があることを発見した。ゲームの多くの場面には、伝統的な要素が多く、若者たちにとっても一種の文化発信の手段になっている」と述べた。

沈国興は、「無形文化財である技術をそのまま保持し続けるだけでなく、新しい物事や技術を絶えず受け入れる必要がある」と強調する。例えば、原神の群玉閣は壮大かつ複雑で、その金のレプリカを製作するために、沈国興は3Dモデリング技術を利用して設計レイアウトや線の動きを正確に捕捉した。

「今や『金銀細工』技術は第八世代へと伝わり、若者にもAIを用いた金のジュエリーや美術品の創作を奨励している」と述べる。「これは全く矛盾しない。新しい技術と理念を最大限に活用し、それを自身の強みに変え続けなければ、常に市場競争力を保つことはできない」と語った。

「飲食から食品、小売スーパーまでIPコラボレーションは、近年非常に一般的なブランドの競業方法であり、伝統ブランドも例外ではない」と、大消費産業アナリストの楊懷玉は述べる。黄金ブームの到来と共に、消費者の金製品の購入はもはやただ結婚のための三金、五金(中国の伝統的な結婚習慣)を買うために留まらなくなっている。「多くの人が日常的な使用を目的に黄金を購入し、同時に黄金の投資価値も考慮している」と彼は指摘する。IPの観点から見れば、「グッズ消費」の台頭は主流消費者層の変化を示しており、現在の消費者はIPに対しての強い興味を持ち、強力なIP文化認識を形成する製品を好んでいる。「例えば(ディズニーの)リーナ・ベルのようなIPの価値が上昇しており、一部の稀少のフィギュアや周辺商品自身が価値を持っている」と彼は語る。

著名なブランド専門家である張晨の見解では、IPコラボを導入する目的は現在のジュエリー業界の課題を解決するためだという。具体的には、消費者が高価な文化クリエイティブな付加価値をどの程度受け入れるかにかかっている。「多くの老舗ゴールドジュエリーブランドは遺産技術を用いているが、それは購入決定の加点要素に過ぎず、消費者は通常、デザインやスタイルに最初に目を惹かれる」と彼は説明し、「もう一つの重要な消費動機は価値の保存と投資のポテンシャル」だと加えた。「良いデザインはユーザーに感情的な価値を提供し、IPは付加価値を更に引き立てる」と彼は結論づけた。

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