グリーンウォッシング(Greenwashing)という言葉をご存じだろうか。
グリーンウォッシングとは、実態を伴わない、または実証が不十分なブランドや商品に対して、企業がパッケージやコピー、PRなどを通じて「エコ」「環境にやさしい」「サスティナブル」などの印象を消費者に与えることを言う。
英語ではうわべを取り繕うことをWhitewashingと言い、それにエコを表すGreenを組み合わせた造語で、この概念は1980年代に誕生した。
近年では、エコやエシカルに対する消費者の意識が高まるにつれてSDGsやサスティナブル、エコなどを積極的に宣伝する企業が増えており、実態を伴わないグリーンウォッシュが消費者の正しい判断を妨げ、エコを唄った不正な資金集めなどの問題が指摘されている。
また、グリーンウォッシュを行っている事が露呈した企業がイメージを著しく損ねるのは言うまでもない。
例えば、過去にはファストファッションのH&Mが、2019年にオーガニックコットンやリサイクル可能なポリエステルなどを使用した「H&M コンシャスコレクション」を発表。サステナブルなファッションとしてPRしたが、具体的な素材の情報が開示されておらず消費者に対して必要以上にサステナブルな印象を与えているとしてノルウェーの消費者庁から指摘を受けている。
今回、欧州委員会(European Commission)は、「循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」に基づきサステナブル製品のための新たな政策パッケージを発表した。具体的には、消費活動において消費者が必要な情報を入手でき、環境に配慮した選択ができることを目的としており、「グリーンウォッシング」への規制を事実上強化するものになる。
「グリーンウォッシング」を規制するため根拠のない主張は認定せず、「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」といった曖昧で検証不可能な言葉を用いた宣伝、実際には一部の商品または商品の一部にしか関係しない環境配慮の取り組みによって商品全体をエコ、サスティナブルと表現すること、第三者機関や公的機関により検証されていない独自のサステナブルラベルを付けることなどを“ブラックリスト”にあげた。
ディディエ・レンデルス(Didier Reynders)欧州委員会司法委員は以下のようにコメントしている。
「サスティナブルな消費活動なしに気候変動対策『欧州グリーンディール(European Green Deal)』の目標は達成できない。消費者の環境意識が高まっている一方、“グリーンウォッシング”や、早いサイクルでの商品買い替えを促す商習慣も見られる。消費者はサスティナブルな選択をするため十分な情報を得る権利があり、環境に良いものを選びたいと思う気持ちを悪用しようとする商習慣から守られるべきである」
同規制はEU加盟国の国内法に組み込まれることになるが、根拠のないエコを規制する動きは世界各国で広がる事が予想され、日本においても例外ではない。ジュエリー業界、メガネ及び時計業界においてもファッション業界同様、生産環境や素材に対してのエコやサスティナブルを打ち出すブランドが増え、またSDGsへの取り組みを打ち出す企業も増えている傾向にあるが、業界の健全性と消費者からの信頼を守るため、また企業の信頼を長期的な目で守るためにも、意図せずともグリーンウォッシュにならないように配慮する必要がある。
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