ラボグロウンダイヤモンドの激動の中での前途多難な道のり – RAPAPORT

先週開催されたRAPAPORT主催のウェビナーで、会長であるマーティン・ラパポートはラボグロウンダイヤモンドに関しての独自の見解を述べた。

地政学的な要因とラボグロウンダイヤモンドの人気の高まりが市場の根本的な再編を引き起こすため、ダイヤモンド業界は今後もプレッシャーにさらされるだろうと同氏は警告し、「今後1年ほどは多少波乱の道を歩むことになるだろう。ラボグロウンダイヤモンドとの激しい競争に直面して、天然ダイヤモンドのビジネスが再編成されるにつれ、前例のない変化が起こるだろう。」と語った。

米国の課題

ウェビナーでは市場の減速に寄与する3つの要因が概説された。ラボグロウンダイヤモンドの脅威に加え、経済の弱さは不確実性を煽っており、金利の上昇とインフレが消費者支出に負担をかけている。地政学的状況の変化は、市場ダイナミクスの大きな変化にも影響を与えている、とラパポートは説明した。

「我々は誰もがお互いに愛情を持っている状況にいたが、そのグローバリゼーションは終了した。(ロシアに対する)制裁は大きな問題であり、世界的な経済戦争が中長期的に激化するに従ってダイヤモンド市場にも影響を与えるだろう。」とラパポートは警告した。

また同氏は、制裁はロシアだけでなく拡大する可能性があり、中国との関係も考慮しなければならず、米国にも制裁が課され、ドルに影響を与えるだろうと述べた。これらの変化が進むにつれて、中国の見通しは不透明だが実際のお金は米国に残るだろう、とラパポートは予測した。

今週発表された、デビアス・ダイヤモンドインサイトレポートによると、米国のダイヤモンドジュエリーの売上高は2022年に2%増の177億ドルとなった。一方で世界的な売上高は865億ドルで横ばいだった。中国での売上高は年間で11.2%減の88億ドルとなった、とデビアスは推定している。

55%の市場シェアを持つアメリカは、不確実性の大きな時期であっても、リーダーシップの役割を担わなければならない、とラパポートは主張した。

金利の増加とインフレは可処分所得を圧迫しているが、それは物事が変化している本当の理由ではない、と彼は強調した。「これらの経済的要因は戦略的な混乱を生み出しているが、国家間の制裁とラボグロウンダイヤモンドの出現は大きな変化だ。」と彼は述べる。

小売の犯罪

近年、ラボグロウンダイヤモンドの人気が高まっており、ジュエリー小売商でのラボグロウンダイヤモンド販売のシェアが増加してる。

ラボグロウンダイヤモンドは、米国最大のジュエリー小売企業であるシグネットジュエラーズのダイヤモンド製品販売の10%台半ばを占めていると、CEOのジーナ・ドロソスが最近の決算会議で報告した。マーケットトレンド分析会社であるテノリスの共同創設者であるエダン・ゴランによると、ラボグロンダイヤモンドは今年7月に米国のジュエラーが販売したルースダイヤモンドの半分、そしてダイヤモンドジュエリーの約6.5%を占めていたという。

予算を重視する消費者は、より大きなサイズや高品質のラボグロウンダイヤモンドに買い替えており、平均して天然ダイヤモンドよりも高い利益率と取引額をジュエリー小売店に提供しているとドロソスは説明した。

その結果として、ラボグロウンダイヤモンドによって天然ダイヤモンドの市場が特定の分野で縮小または消滅するだろうとラパポートは予測を述べた。

過去1年間、ラボグロウンダイヤモンドが最も成長した分野はブライダルおよびエンゲージメントリングの市場だった。しかしラパポートは、ラボグロウンダイヤモンドの価格が低下し続けるにつれて、ラボグロウンダイヤモンドはブライダル市場を失うだろうと予測している。むしろ、ラボグロウンダイヤモンドはファッションジュエリーの市場を引き継ぐだろうと予測した。

しかし今のところ、ブライダルジュエリーの市場はラボグロウンダイヤモンドが台頭してきており、消費者の考え方に永続的な影響を与える可能性がある、とラパポートは指摘した。ラボグロウンダイヤモンドを消費者にプッシュすることで、ジュエラーはミレニアル世代とZ世代に対して婚約指輪への支出を減らすよう説得しており、また天然ダイヤモンドは重要ではないと言っている、とラパポートは指摘した。

「それは犯罪のようなものだ。そのビジネスは何だ?女性は結婚に願望があり、恋愛シナリオ全体が天然ダイヤモンドを語っているため、反発が予想されるだろう。顧客が、もっとお金を払っても意味のあるものを与えたいと感じるのであれば、天然ダイヤモンドを買うのが最善だ。」と述べた。

ラボグロウンダイヤモンドで生き残ることはできない

ラパポートは、現在、天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの価格差がラボグロウンダイヤモンドに有利に働いていることを認めた。

彼は、2cts、F、VVS2のダイヤモンドについて、商品の生産から販売の各段階での天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドのコストと価格を比較した。小売店得た利益率は、天然ダイヤモンドでは24%であるのに対し、ラボグロウンダイヤモンドでは83%だったと指摘した。また、小売価格の差によって消費者は31,104ドルを節約できることがラパポートの調査で示された。

「小売店の観点から言うと、彼らは利益を得ており、また消費者はお金を節約できているので、誰もラボグロウンダイヤモンドに向かって走っている理由を理解できる。とラパポートは言い、また「しかし、価格が下がるにつれて、これらの数字も下がるだろう。」と付け加えた。

ラパポートは、ラボグロウンダイヤモンドは非常に安くなるため、利益率が非常に高かったとしても純利益は(低くなり)小売店の生存には十分ではなくなるだろうと述べ、「小売店はラボグロウンダイヤモンドでは生き残れない」と付け加えた。

ラパポートは、価格によってラボグロウンダイヤモンドを販売する宝石業者を非難し、今後予想される価値の下落を消費者に開示しないのであれば彼らの倫理を疑問視すると述べた。

「彼らはそれが天然ダイヤモンドとまったく同じ製品だと言っており、米国連邦取引委員会(FTC)はそれが良い製品だと考えている。」とラパポートは言った。そして「適切に情報を開示すれば良いことだと思う。」と述べた。

ラパポートは、ラボグロウンダイヤモンドを販売する際に、今後予想される価値の低下を開示することを宝石店に要求するよう、FTCに請願書を送る準備しているという。

ダイヤモンドは特別なもの

ラボグロウンダイヤモンドがブライダルからファッションジュエリーに軸足を移す中、高級品としての天然ダイヤモンドの位置づけが長期的には大幅に強化されるとラパポートは予想している。

同氏はデビアスに対し、(高級品と天然ダイヤモンドの)関連性を維持したいのであれば、天然ダイヤモンドのマーケティングへの支出を増額するよう求めた。デビアスがホリデーシーズン中に天然ダイヤモンドの宣伝投資すると最近発表した2,000万ドルを超えてもだ。

同氏は、業界にとっての試練は、高級ジュエリー市場をどのように維持するかであり、高級ジュエリー市場が注目を集めるだろうと強調した。優れたマーケティングによって自らを守ることはでるかもしれないが、業界はマーケティングだけに頼ることはできない。小売店はダイヤモンドを適切に販売しなければならず、価格に頼った販売をやめるべきだとラパポートは強調した。

「天然ダイヤモンド市場は問題ないと思うが、ダイヤモンドの特別性を売る方法を学ぶ必要がある。顧客が価格だけを念頭に置いているのであれば天然ダイヤモンドには価値がない。そのような顧客はスワロフスキーに送ればいい。」と彼は言い、「高価な商品を売ることを恐れず、ダイヤモンドが全ての人に適しているわけではないことを理解する必要がある。あなたは特別で、あなたの(販売する)ダイヤモンドも特別なのだ、決してそれを忘れてはならない。」と述べた。

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