QRコードとブロックチェーンによるジュエリートレーサビリティ – ベルギー”iTraceiT”

iTraceiTが5月3日にアントワープでトレーサビリティサービスの立ち上げを発表した。iTraceiTはベルギー・アントワープに拠点を置くテクノロジーサービスプロバイダーだが、彼らの提供するトレーサビリティソリューションはジュエリーや、ダイヤモンド以外の宝石にも適用することが可能だという。

今月行われた発表に加え、昨年末にThe Diamond Loupe(AWDC)が同社に実施したインタビューの内容を要約しながら、iTraceiTのサービスについて解説したい。

発表会においてiTraceiTのマーケティング及び販売ディレクターであるShavit Gaistmanはこう説明した。
「最近になって多くの企業や団体がトレーサビリティに関する発表を行っています。これは、業界の認識が拡大していること、及びトレーサビリティソリューションが現在(関心の)中心にあることを意味しており、非常にエキサイティングな状況です。業界の多くの人間はトレーサビリティソリューションが素材から完成品までの供給パイプライン全体にわたってカバーしていることを確実に保証することを望んでいます。」

iTraceiTの特徴の1つは、(ダイヤモンドの)サイズが限定されないことだと彼は説明する。
「小さいメレサイズのダイヤモンドは、世界中で製造、販売されているジュエリーの多くの部分を占めています。当社のブロックチェーンベースのソリューションは、あらゆるサイズのダイヤモンドと宝石、0.25カラット未満のダイヤモンドにも使用できます。iTraceiTは、2.00カラットでも0.02カラットでも、製造プロセスにあるあらゆる石を追跡可能です。」

2021年12月のThe Diamond Loupe (AWDC)のインタビューには、同社の新CEOであるFrederik Degryseが応じている。詳細は以下の通り。

ダイヤモンドに”指紋”を刻印するか?どのようなデータに基づいてトレーサビリティが構築されているか?

iTraceiTでは、ダイヤモンド自体に確実な「指紋」のような識別子を刻印しておらず、トレーサビリティは鉱山、鑑定機関などの各段階で提出される書類確認などのプロセスに基づいている。それは、iTraceiT設計の重要なポイントとして、実際に実行可能なソリューションであるということを重視している為だという。製造プロセスに余計な時間や高いコストを追加せず、業界の複雑なサプライチェーンに対応できるシンプルで信頼性の高いシステムを同社は目指している。さらに、同社の技術チームではこの技術をパートナー企業の在庫システムに簡単に統合できるという。

システムの実用性について

QRコードテクノロジーがこのトレーサビリティソリューションの基盤になっている。各iTraceiTユーザーには信頼性の高い個々のクラウドデータベースが割り当てられ、このデータベースとiTraceiTのソフトウェアを使用して、ユーザーは単一のダイヤモンド、メレのロット、インボイスだけでなく、地金、製品などにも添付できる独自のQRを生成できる。一度QRコードが作成されると、それが次のクライアントに渡っても永久に生成したユーザーに割り当てられたままになる。サプライヤーからQRコード(と商品)を受け取ったクライアントは、このコードをスキャンして次の(追跡)スペースを作成し、商品に応じて分割したQRコードを生成できる。
原石のソートからソーイング、カッティングなど工程毎に異なるQRコードを付けることが可能だが、この追跡チェーンは生産のどの段階からでも開始できる。(理想的には鉱山からのスタートで、同社はいくつかの鉱山と取り組みを協議している。)QRコードの利点の1つは、元のインボイス、パーセルの開封とソートの動画から画像、証明書に至るまであらゆる種類のデータをQRコードに添付できることだと同社は言う。「私たちの経験上、小売業者ごとに必要なデータのレベルが異なり、そのためすべての需要にソリューションを提供できる柔軟性のあるツールを目指しています。」とDegryseは説明する。

誰がデータを処理するのか

「iTraceiTは、鉱山やオークションハウスが来歴(原産地)をプロモートし、ソートや生産プロセスのタイムラインに影響を与えない使いやすいトレーサビリティを提供する優れたソリューションだと信じています。」とDegryseは言う。どのユーザーもパイプラインのどの時点からでも改ざん不可能なトレーサビリティチェーンを開始できる。ダイヤモンド原石がカットされる場合、QRコードが各ダイヤモンドに添付されるが、 iTraceiTはダイヤモンドにQRコードを刻印していない。刻印に関しては他の専門企業との協力関係の可能性があると言う。QRテクノロジーは、パイプラインの整合性を提供するために、プランニングファイルなどの追加ドキュメントを添付できる。同社ではそれをスキャンしてファイルの有効性を自動的に確認するAIも開発した。その結果に基づきサプライチェーンの各段階で個別の透明性評価が与えられる。メレサイズも同様のプロセスで検証される。ロットが分割又は統合されると、その段階に応じてQRが生成され、そのすべての段階でリンクされるように設計されているという。

料金に関して

価格は月額サービス料と使用料で構成される。顧客は、ユーザー数と使用率に応じて、さまざまなサブスクリプションプランから選択できる。価格が手頃であり、中小企業から大企業まで全ての企業が利用できることが重要だと同社は説明する。

現存する他社のトレーサビリティに関して

現在業界に存在する全てのトレーサビリティプログラムを支持しており、競合他社と見なしてはいないという。「小売店は(様々なプログラムではなく)一つのトレーサビリティソリューションを利用することを望んでいると理解しており、他のプログラムと協力したいと考えています。そのため、他のプラットフォームと簡単に接続および統合できるように設計しています。 我々は、業界全体に信頼と透明性の高い、尚且つ柔軟で使いやすいソリューションを提供する独立したテクノロジー提供することを使命にしています。」とDegryseは説明した。

不正及び改ざんの防止

iTraceiTテクノロジーには、ソートから再ソート、分割、メレサイズダイヤモンドの統合までのすべての工程間の整合性が保たれていることを確認するための数多くの機密チェックプロセスが採用されているという。大粒の1つ石の場合はこのチェックは比較的容易で、全ての行動履歴は変更できない監査証跡に記録されるため、不正な行動があった場合に原因を見つけることも容易だ。また、利用状況を反映した評価システムにより、より透明性の高いユーザーに好評価をつける仕組みも構築している。

企業が情報にアクセスする場合、全ての情報がプラットフォーム上にある必要があるか?

各パートナーの個人データベースの情報は一般公開されない。 QRコードをスキャンして付随情報を表示するには、iTraceiTライセンスが必要で、パイプラインの次のステップで共有する情報と、AIによってレビューされるものの共有しない情報をユーザーが選択できる。

*上記インタビュー内容は2021年12月時点のもので、仕様が変更またはアップデートされている可能性もあるので注意。

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