Sarine社CEOインタビュー”ダイヤモンドトレーサビリティ需要の急増” [RAPAPORT]

ロシア制裁に端を発し、ダイヤモンドおよびジュエリー業界では、パイプライン全体の企業がロシアからの供給を回避しようとしているため、トレーサビリティプログラムへの関心が高まっている

RAPAPORTは月曜日、世界的ダイヤモンドテクノロジー企業であるSarine Technologies社のCEOであるDavid Block(デビッド・ブロック)のインタビューを掲載、ダイヤモンド業界に起こっているトレーサビリティの問題について語った。

「(ロシア、ウクライナ間の)紛争が発生して以来1−2ヶ月で、業界のさまざまな企業からトレーサビリティに関しての大きな関心を寄せられました。」とブロックは語った。「前までは(単に)良さそうで将来いつか利用され始めるかもしれないと皆が考えていたものが、今では必要なものだと考えるようになっており、トレーサビリティを可能にするためにそれぞれのプロセスとサプライチェーンを適応させるために行動を始める必要に迫られています。」

ロシアとウクライナの戦争が始まり、米国政府がアルロサに制裁を課すと、いくつかの企業がトレーサビリティサービスを相次いで発表した。
デビアスは当初の予定より早くTracrプラットフォームをスケールアップし、米国宝石学協会(GIA)はダイヤモンドの原産国を検証するGIA Source Verifyと呼ばれる消費者向けサービスを発表している。また先週には、アントワープを拠点とするテクノロジープロバイダーであるiTraceiTが、QRコードとブロックチェーンテクノロジーに基づいたダイヤモンドおよびジュエリー業界向けのトレーサビリティソリューションを発表した。Sarine社は以前から同社のトレーサビリティプログラムであるDiamond Journey(ダイヤモンド ジャーニー)を開発、提供している。

小売分野からの圧力

鉱山会社やサプライチェーンの中流からトレーサビリティに対する関心が著しく高まっている一方で、この需要を牽引しているのは小売部門であるとブロックは説明する。事実、幾つかのジュエリーブランドはロシア産ダイヤモンドの使用を中止すると早々に宣言している。

Sarineは、4月末に、AuraBlockchainConsortiumのダイヤモンドトレーサビリティ推進としてSarineのダイヤモンド ジャーニー ソリューションが選択されたと発表した。 このグループはプラダ・グループ、LVMH、シュモングループ傘下のカルティエによって2021年4月に設立された非営利団体で、世界のラグジュアリーブランドにブロックチェーンソリューションの使用を呼びかけ、顧客に一層の透明性とトレーサビリティを提供することを目的としている。

Auraは様々なブランド間で協力を促進しており、このことはこの共同体がラグジュアリー市場でのトレーサビリティの基準を設定を希望していることがわかる。Auraは他のブランドにもプログラムへの参加を呼びかけている。ブロックは、AuraとSarineの契約はこの紛争が起こる前であったことを強調した。

スケールアップ

Sarine Technologiesは、原石サプライヤーと協力して原石をスキャンしシステムに追加し、サプライチェーンに沿って商品を追跡できるようにしている。これはサプライヤーと契約している鉱山の商品だけでなく、オークションハウスや製造工場など、一次ソース(鉱山)から仕入れていない第2段階の商品も含まれる。

(シーリングされた)原石のパーセル(小包)が開く際、Sarineは人員を配置し原石の記録を取る。その登録プロセスは最終的には自動化される予定で、そのオートスキャンソリューションは現在テスト段階だ。「今後数か月以内に」実用化できるとSarineは予想している。オートスキャンによりSarineは大量の原石をスキャンできるようになり、トレーサビリティのために利用可能なデータをスケールアップできるようになるとブロックは説明した。

事業の調整

小売部門がトレーサビリティの導入を促進しているとの前提に基づき、現在Sarineはダイヤモンドジャーニープログラム導入の注力をアジア市場から米国市場へ移している。戦争が始まってからトレーサビリティへの関心の高まりはすべての国と地域に及んでいたものの、米国市場での需要の高まりは最も急激なものだったとブロックは説明する。またこの同社の戦略変更は、米国市場がアジア市場よりも早いペースで2022年にコロナ禍から回復するという観測にも基づいている。事実、中国と香港で発生している最近の封鎖は、これらの地域での小売市場の動きを抑制している。

トレーサビリティに対する需要の高まりは、Sarine、デビアス(Tracr)、GIA、iTraceiTなどのサービスプロバイダーにとって追い風になる可能性がある。Sarine社は長年ダイヤモンド製造部門で利用する(原石プランニングシステムなど)機器を提供してきたが、トレーサビリティ、4Cグレーディング、デジタルオークションによる収益が2020年の約4%から翌年2021年には8%に上昇している。同社は、このような分野での収益が数年以内に全体の半分以上を占めることを目指しているとブロックは語った。(つまり、Sarine社にとってより既存分野以外へのサービス提供が増えることを意味する。)

Sarineのレポートによると、2022年第1四半期の総収益は前年比10%減の1560万ドルであった。この減少は、2021年の好調によるものであり、地政学的な緊張(ロシアの状況)がこの期間の製造業に重大な影響を与えていないと同社は説明した。

「制裁にもかかわらず、ロシア産を含むバリューチェーンへのダイヤモンド原石の流入は、2022年の最初の3か月間も衰えることなく続いた。」とSarineは5月15日のステートメントで述べている。「サプライチェーン中流での生産(研磨)は、2021年後半と同様のペースで2022年の最初の3か月間継続した。これは1日平均100,000石を超える、(Sarineの)インクルージョンマッピングシステム(Galaxyシリーズ)の利用実績によって証明されています。」

「今後、我々は製造分野が制裁の影響を受け始めているのを見るでしょう。」とブロックはインタビューで付け加えた。

Sarine Technologiesはイスラエルに本社を持つダイヤモンドテクノロジーの最先端企業であり、ダイヤモンドの原石評価、カットプランニングとプロセス、ダイヤモンド鑑定及び小売店でのデジタルソリューションを提供している。現在世界中で流通するダイヤモンドのほとんどが同社のテクノロジーに触れていると言われる。

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