移りゆくダイヤモンドの価値とは何か

ここ数年間でダイヤモンドの神話が崩壊しつつある。そして一部の新しい世代の若者は、よりコストパフォーマンスの高い中古ダイヤモンドやラボグロウンダイヤモンドに注目しつつある。

かつて、ダイヤモンドは愛の象徴として最も価値のあるものとしてみなされていた。しかし現在、この「ダイヤモンドのストーリー」から目を覚ますと、人々はダイヤモンドが「ただの炭素に過ぎない」と悟った。

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10分間で数分の1の価値に

ダイヤモンドの婚約指輪を着けることは「地球の歴史を薬指につけることだ」と言う人もいる。天然ダイヤモンドは数十億年前に形成されたもので、地球上で最も硬く、ダイヤモンドはダイヤモンドでしか傷つけることができない。

この硬さ、永遠性、輝きという特性は愛と結びつけられ、ダイヤモンドは長い間究極のラグジュアリーとなった。1カラットのダイヤモンドは僅か0.2gしかないが、100万円以上の価格がつけられる。

しかし、ここ数年間、ダイヤモンドの神話は崩壊しつつある。「店頭で100万円のダイヤモンドの指輪を買っても、店を出て10分後には価値が数分の1になる。」とある消費者は語った。

あるブランドリサイクル事業をしている男性は先日、顧客から1カラット、Dカラーのダイヤモンドを買い取った。その顧客が3年前にダイヤモンドを購入した時、その価格は200万円以上だったが、現在の買取価格は36万円ほどで、そのダイヤモンドは他のバイヤーに38万円ほどで売れた。

現在、ダイヤモンド買取は株の投資よりリスクが高いビジネスだ。先の男性は12万円でやや黄色い1カラットのダイヤモンドを買取ったが、3ヶ月も販売できなかったという。また別の買取業者は昨年数百点のダイヤモンド買い取ったが、ダイヤモンドの価格の下落で数百万円の損失を出したという。

90年代生まれのある女性は3年前に結婚した時、夫と350万円で1カラットのカルティエのダイヤモンドリングを購入した。当時店員は「ダイヤモンドがいくら値下げしても、カルティエの指輪の価値は下がらない。」と言ったが、現在ではこのリングの買取価格は80万円以下だ。

一昨年、95年代生まれのある女性は南アフリカにいる親戚を通じて約140万円で1カラットのダイヤモンドを購入した。これは非常にグレードの高いダイヤモンドで、国内の店頭で購入するとしたら200万円以上はするだろう。彼女はずっと「価値のあるダイヤモンドを買った」と考えていたが、先日たまたま買取店でこのダイヤモンドの買取価格が40万円ほどだと知った。

ダイヤモンド「価値の創造」

ダイヤモンドはある時から、結婚におけるある種の必需品となった。すべての女性にはダイヤモンドへの夢がある。SNSを見ると誰かのダイヤモンドのリングを見て憧れを募らせる。レストランで隣のテーブルの女性が伸ばした手に大きなダイヤモンドが見えると羨ましい。こうして多くの女性はダイヤモンドへの憧れを募らせる。

しかし、ダイヤモンドに関するこの夢は、ダイヤモンド業者が仕掛けた「甘いストーリー」だ。

18世紀まで、ダイヤモンドは平凡な宝石だった。19世紀後半にイギリスの商人セシル・ローズは南アフリカのダイヤモンド鉱山を独占し、デビアスを設立した。彼は毎年のダイヤモンドの生産量をコントロールし、販売の単一チャンネルを確立した。

その後、デビアスはダイヤモンドのマーケティングを愛と結びつけた。これは広告業界で「史上最も成功したマーケティング事例」と呼ばれている。

1938年以降、デビアスは広告に多額のお金を費やした。当時流行した映画では主人公がダイヤモンドでプロポーズし、一番大きくて輝くダイヤモンドを買うべきだと述べた。

第二次世界大戦後、西洋の経済、文化、娯楽が回復し、デビアスは数十人のハリウッドスターを起用し125の新聞に広告を載せた。その際に生まれた最も有名なキャッチフレーズが「ダイヤモンドは永遠、永遠に伝わる」だ。それはダイヤモンドが愛のように唯一で貴重であることを人々に刷り込み、ダイヤモンドが中古市場に大量に流通して価値が下がるのを防いだ。

ビットコインのように、ダイヤモンドの価値は人の信仰にかかっている。共通の夢が作られると、ダイヤモンドは身につける宝石としてだけでなく、経済的な属性を持ち、富を代表するハードアセットになる。そのため多くのダイヤモンドブランドはデビアスのように、ダイヤモンドと愛を結びつけている。

ダイヤモンドは金より価値がないのか

ダイヤモンドの買取はリスクが高いが、金製品の買取は一方で好調だ。同じ経済的価値のある装飾品なのに、なぜ金はダイヤモンドよりも価値を保つのだろうか?

一つはラボグロウンダイヤモンドの発展だ。過去10年間で世界のラボグロウンダイヤモンドの技術と産業は急速に発展した。現在ではジュエリー品質のダイヤモンドをわずか数週間で生産でき、その品質と輝きは天然ダイヤモンドと全く同様だ。ラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドの違いを「湖に張った氷と冷凍庫の氷の違いのようなものだ」と表現した専門家もいる。

他の理由は、ダイヤモンドの値段の下降だ。2024年、デビアスは2カラット以上のダイヤモンド原石を15%以上値下げし、0.75-2カラットのダイヤモンド原石は平均10%-15%値下げ、0.75カラット以下は5%-10%値下げしている。

一方で全世界的に婚姻率の低下と価値観の変化がダイヤモンド市場に大きな影響を与えている。かつて男性からプロポーズされてハッピーエンドを迎えた王道の映画は少なくなり、現在の映画やドラマで最も人気があるのは、自立して男性に頼らず、自分で道を切り開くタイプのヒロインだ。

独身がますます増えている時代に、若者は象徴的意味よりダイヤモンドの実際の経済的価値により注目するようになる。そのため、中古ダイヤモンド、ラボグロウンダイヤモンドへの注目、さらにはダイヤモンドを買わない若者が増えている。

ダイヤモンドを含め、永遠のものは存在しない。ダイヤモンド自体の価値は人為的に作られたもので、その化学成分は黒鉛と同じだ。イギリスの小説家ウィルキー・コリンズが『月長石』で書いたように、ダイヤモンドは「ただの炭素に過ぎない」。

ダイヤモンドの価値とは何か

これらの歴史がダイヤモンド業界全体に与える教訓とは何だろうか。ダイヤモンドには価値がないということだろうか。

ダイヤモンドはかつてその愛と結びつけられた強力なストーリーによって、ラグジュアリーとしての地位を築いた。価値とは、人々が信じるところに生まれる。その神話が崩壊しつつある現在でも、現在のダイヤモンド業界はその神話の遺産の上にブランドの価値を築いている。ダイヤモンドは価値があるという前提の元に、過去のストーリーラインに沿ってただダイヤモンドを販売しているだけだ。

過去のマーケティングがあまりにも強力であったため、それでもまだダイヤモンドの価値を保つことができるかもしれない。しかし、市場に溢れる二次流通ダイヤモンド、ラボグロウンダイヤモンドの台頭、そして消費者の価値観やライフスタイルの変化は確実に市場を縮小させ続けている。また、この記事に書かれているような内容は現在ネット上やSNS、YouTubeなどでも頻繁に取り上げられており、シークレットでも何でもない。

ダイヤモンド業界が努めるべきなのは、市場の変化を嘆くことでも、ラボグロウンダイヤモンドを批判することでもない。また、資産価値があるというストーリーに固執することでもないだろう。ダイヤモンド業界が真に求められているのは、消費者の価値観の変化に合わせダイヤモンドの価値を再創造することだ。価値は、人々が信じるところに生まれる。そして、その価値を作り出すのもまた人だ。

天然ダイヤモンドが数十億年という長い期間をかけて形成されたこと、地球上で最も硬い物質であること、そして比類のない美しい輝きを持つことは揺るぎない事実だ。この唯一無二の特性を持つ美しい宝石の価値を高める努力にダイヤモンド業界全体が取り組むことが、今求められている。

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