EU、ダイヤモンドのトレーサビリティ義務化を延期、原産国の特定を義務付け

欧州連合(EU)はロシア産ダイヤモンドに対する制裁の履行を目的とした義務的トレーサビリティ制度の導入を2026年1月1日まで延期した。

「トレーサビリティシステムに関連するガバナンスの問題に対処するためには、G7諸国および第三国との継続的な協力が必要である」とEU理事会は、同連合の公式広報誌に掲載した決定文で述べている。「これらの措置の実施支援とG7および第三国との関与を更に促進するために、ダイヤモンド関連の措置に関してG7パートナー間の公平性の監視を継続するべきである。」と説明した。

当初のスケジュールでは、ポリッシュダイヤモンドの輸入に対する「トレーサビリティに基づく証拠」の提供が2025年3月1日から義務化される予定だったが、業界関係者からは、規則の不確実性や準備不足が指摘されており、理事会は導入延期を「適切」と判断した。

この制度の目的は、非ロシア産でG7が認証したダイヤモンド原石からとポリッシュダイヤモンドと結びつけ、透明性を向上させることである。

米国に拠点を置くジュエラーズ・ビジランス・コミッティ(JVC)のCEO兼ゼネラルカウンセルであるサラ・ヨードは、「EUがポリッシュダイヤモンドに対する義務的トレーサビリティ制度の実施を延期したことは、業界が3月までに技術的な準備が整っていないと示していたことを考慮すると、合理的である。」と述べた。

この発表は、ウクライナ戦争開始から3年間でEUがロシアに対して行う制裁措置の16番目のパッケージの一部だ。他のG7メンバー、特に米国はこの時点でアップデートを公表していない。

「米国はトレーサビリティ導入の期限を2025年3月1日とすることに公約したことは一度もないため、米国の規制に変更はない」とヨードは付け加えた。

米国は引き続き、0.50カラット以上の原石およびポリッシュダイヤモンド、またロシアで製造された、もしくはロシアを経由したダイヤモンドジュエリーの輸入を禁止している。

しかし、EUは混合原産地のダイヤモンドに関するルールに重要な変更を行い、2025年3月1日からEUへの原石輸入時に採掘原産国を明記した証明書の提供を義務化することを、理事会の決定として発表した。

このため、出荷する原石の正確な原産国を記載したキンバリープロセス(KP)証明書を提出することが必須となる。可能であれば、原産国の割合による内訳も提供する必要があると、アントワープ・ワールド・ダイヤモンドセンター(AWDC)は会員に向けて説明している。

「AWDCとベルギー政府が共同で主導した激しくも建設的な交渉が、最終的にG7によるトレーサビリティ制度の導入期限を延期する結果に結びついたことを喜ばしく思っている。」とAWDCのCEOであるカレン・レントマースは述べている。「現段階ではまだ、トレーサビリティシステムがどのように機能し、どのように管理されるかに不確実性があり、G7はこれらの側面を最初に明確にすべきである。」と述べた。

期限の延期によって、ダイヤモンド企業は制度の実施を日常業務に備えるための十分な準備期間を得ることができたとレントマースは付け加えた。

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