ブルーダイヤモンド「メロン・ブルー」約39.4億で落札

クリスティーズの「マグニフィセント・ジュエルズ」セールにおいて、9.51カラットのファンシー・ヴィヴィッド・ブルーが2,560万ドルで落札された。1ドル=154円計算で約39億4千万円だ。落札されたのは、米国の著名収集家バニー・メロンが所有していた「メロン・ブルー」で、VVS1、またはインターナリーフローレスの可能性を持つ歴史的なダイヤモンドだ。

このブルーダイヤモンドは2014年に3,260万ドルで落札された経緯があり、今回は約20%の下落での取引となった。ただし1カラットあたり約270万ドルという水準は依然として極めて高く、希少色ダイヤの市場における「階層の厚さ」を示す結果となった。クリスティーズによれば、同社でのヴィヴィッド・ブルーとしては過去3番目の高額落札であり、上位には「オッペンハイマー・ブルー」(2016年・5,750万ドル)、「ブルー・ロワイヤル」(2023年・3,950万ドル)が並ぶ。

他方、この落札価格の調整は単なる一例ではなく、世界のハイエンド・オークション市場に共通するトレンドを映している。サザビーズやフィリップスでも、2022年以降のラグジュアリー・カテゴリーは「記録更新」と「慎重姿勢」が混在しており、特に地政学的リスク、米中経済摩擦、インフレ環境による投資判断の変化が高額落札の振れ幅を大きくしている。

欧州のオンライン宝飾販売大手セブンティセブン・ダイヤモンズ(77ダイヤモンズ)のトビアス・コルミンドは、現下の高額市場について「ウクライナ情勢、米中関税問題、中国経済の減速などが複合的に作用し、買い手の態度が慎重化している」と指摘する。これは、フランスや英国の美術商協会が発表する定点観測レポートとも整合し、富裕層の資産配分に『防御姿勢』が見られることを示す。

また、ブルー・ダイヤモンドは「唯一無二性」が特に強く、通常のホワイト・ダイヤモンド市場とは全く異なるダイナミクスで価格形成が行われる。専門家の間では、希少色ダイヤは単なる供給不足だけでなく、原石の地質的特異性・歴史的出自・所有者のストーリー性が価格に乗算される資産クラスと位置づけられている。

今回のメロン・ブルーも、単なる宝石ではなく「コレクターの系譜と文化史的背景がセットになった一品」であり、市場評価が二層構造になっている。すなわち、宝石学的品質に加えて『誰が所有してきたか』という要素が重要なプレミアムとして作用する。

ジュネーブ・ラグジュアリー・ウィーク全体では、総額7,560万ドル、落札率94〜95%という非常に堅調な数字を記録した。カテゴリーごとの温度差はあれど、トップクラスの宝石が依然として強い需要を維持していることは確かだ。

総じて、ブルー・ダイヤモンド市場は「力強い需要」と「慎重な投資姿勢」という二つの流れが交錯しながらも、他のラグジュアリー資産と比較して「価格の底堅さ」が際立っている分野だろう。今回の落札は、その現状を如実に物語る象徴的な事例だ。

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