
キンバリー・プロセス(KP)プラナリーが見直しを議題に
国際的なダイヤモンド原石流通を監督するKPの年次プラナリー会合がドバイにて開催され、紛争ダイヤモンド(コンフリクト・ダイヤモンド)の定義改定をめぐる議論があらためて前面に浮上した。会合では、加盟国代表、業界団体、NGOなどが、現行制度の枠組みに対する関心を示した。
業界団体である国際ダイヤモンド連盟(WDC)のプレジデント、フェリエル・ゼルーキは、会合の開会にあたり「われわれは今、分かれ道に立っている。KPを前進させるのか、停滞させるのか。全体としての勇気と結束が問われている」との発言を行っており、定義のモダナイズに対する強い姿勢を示した。また、同氏は「更新された定義が約150万名のアーティザナル・マイナー(手掘り採掘者)を保護する可能性がある」と述べた。
現行定義の概要と改定議論
KPにおける紛争ダイヤモンドの定義は、従来「正当な政府を転覆させることを目的とする反政府軍による紛争の資金源として用いられるダイヤモンド原石」としてきた。だが、WDCなどはこの定義が今日の多様化する紛争構造を反映しておらず、拡張が必要だとしてきた。
具体的には、「国家主体・準国家主体が関与する人権侵害」「強制労働・児童労働のリスク」「加工・流通段階を含めたサプライチェーン全体」などを含めるべきとする提案がなされている。
制度運営と信頼性の課題
KP制度には、制度運営上および実務上次のような留意点がある。まず、全加盟国の合意を前提とするコンセンサス方式を採用しており、わずかな国の反対でも定義改定の合意形成が遅延する構造を抱えている。さらに、加盟国間で監査・報告の実効性や透明性に大きな差が存在するという指摘もある。
こうした背景のもと、現行定義のままでは「紛争ダイヤモンド」に含まれうるリスクが制度外に残されているとの指摘が専門家・業界内から出ている。
今後のプロセスと期待される動き
今回の会合では、定義見直しを推進するための作業部会(ワーキング・グループ)の立ち上げに向けた議論が進められており、加盟国間での意向確認が行われている。WDCは、加盟国・国際機関双方が改定案の協議に本格的に取り組む姿勢を示している。
定義更新が実施されれば、ダイヤモンド産業における調達・認証体制やブランド・小売段階での原産地説明責任(トレーサビリティ)に影響を及ぼす可能性がある。今後、加盟国の合意取得・改定案の正式採択まで数年を要するとの見方が業界内では出ている。



コメント