ボツワナ、国家戦略として「ゴールデンパスポート」販売を開始

Botswana passport on its flag top view

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ダイヤモンド収入の急減で新たな財源確保策を導入

天然ダイヤモンド産出国として知られるボツワナ共和国は、ダイヤモンド依存経済のリスクに対処するための新たな財源確保策として、「ゴールデンパスポート(投資市民権)」プログラムを2026年初頭から開始すると発表した。 この動きは、天然ダイヤモンド収入の急落が国家予算に深刻な影響を与えていることを背景にしている。

「ゴールデンパスポート」とは、高純資産者向けの投資市民権制度(Citizenship by Investment:CBI)であり、応募者が国家基金への寄付を行うことでボツワナの市民権を取得できる仕組みだ。提供される主なメリットとして、90以上の渡航先へのビザ免除、居住義務・言語要件のなしが挙げられており、世界中の富裕層の関心を集める狙いだという。応募者の対象国としては、インド、米国、南アフリカ、パキスタン、ナイジェリア、ジンバブエなどが挙げられている。

寄付額は最低75,000米ドル(約1,125万円超、配偶者や18歳未満の子どもは1人あたり追加10,000米ドル)とされており、サントメ・プリンシペで実施されている類似制度より割安である点も強調されている。応募受付は2026年第1四半期から開始予定であり、すでに数百件の関心表明が寄せられているという。

収入減の背景:ダイヤモンド依存経済の痛手

ボツワナの経済構造は長年にわたり天然ダイヤモンド輸出に依存してきた。政府系資源企業Debswana(ボツワナ政府と英アングロ・アメリカンが50:50で出資)は、世界屈指の採掘鉱山を運営し、同国の外貨収入・GDPに大きく寄与している。

しかし、天然ダイヤモンド収入は2022年以降およそ30%以上も減少していると報じられている。これは世界的な需要低迷、価格下落、ラボグロウンダイヤモンドの競合、そして主要市場である米国・中国での消費鈍化など複合的な要因が影響しているものと見られる。原石価格下落と需要の弱さにより、ボツワナ政府の財政は大きな痛手を受けている。

加えて、同国のダイヤモンド依存度は依然高く、輸出収入の7〜8割を天然ダイヤモンド関連が占めるとの分析もある。このため、収入減が続くと政府支出への圧迫、インフラ投資や社会サービスの維持に影響を及ぼす懸念が強まっている。

「ゴールデンパスポート」の戦略的意義

ボツワナ政府がゴールデンパスポート制度を導入したのは、政府歳入の多角化を図る狙いがある。ブタレ外相はこの制度について、「グローバル資本と人材を呼び込み、長期的な安定を確保するためのステップ」と位置付けており、アフリカで最も安定した民主主義国家としてのブランドと高い統治水準を強調している。

制度導入により得られた資金は、社会サービス、インフラ投資、教育・医療の強化など、ダイヤモンド収益以外の持続的成長基盤形成に充当される可能性がある。政府は、単なる外貨獲得ではなく、長期的な経済転換に向けた資金源確保策として制度を位置付けている。

国際的な類似プログラムとの比較

「ゴールデンパスポート制度」は、世界の多くの国で導入されているが、ボツワナ版は比較的低額な寄付額と居住義務不要など柔軟な条件により、申請者の裾野を広げようとしている。サントメ・プリンシペでは90,000米ドル程度が最低ラインとされており、ボツワナの制度はこれより割安だとされる。

ボツワナが財政多角化を進めると、天然ダイヤモンド産業への依存度は徐々に低下する可能性がある。これ自体は長期的には市場安定化に寄与する面もあるが、短期的には供給側の調整圧力が高まる可能性もある。ボツワナが「ゴールデンパスポート」制度を打ち出した背景には、天然ダイヤモンド収入の急激な減少による財政圧力がある。これは単なる財政補完策に留まらず、原石供給側の経済構造が変化していることを示す重要なシグナルと理解する必要がある。供給国の政策動向は、原石価格、契約条件、流通の安定性に影響を与えるため、ジュエリー業界にとっても需給バランスの見通しを立てる上で注目すべきトピックだろう。

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