米国のダイヤモンド市場の矛盾の背後にあるもの

米国のダイヤモンド卸売市場は複雑な状況にある。業界アナリスト企業であるテノリスによると、天然ダイヤモンドジュエリーとルース(裸石)の小売売上は7月に前年比8.5%増加した。しかし、卸企業は小売業者による仕入れが過去数年よりも鈍化していると述べる。

この矛盾した状況の背景には、小売業者の購入方法の変化があると見られる。天然ダイヤモンドの価格下落により、小売業者は在庫のダイヤモンドの価値が数か月で下がることを危惧しており、そのため在庫を仕入れる意欲が下がっている。小売業者がリスクを最小限に抑えようとする中で、メモ(委託販売)の役割は大きくなっている。

安定した消費者需要と不安定なディーラー感情の矛盾は、小売業者の現在の在庫状況に起因すると、ジュエラーズ・オブ・アメリカ(JA)のCEOであるデビッド・ボナパルトは説明した。

小売では、高級店ではダイヤモンドの売上が安定しているが、大量販売企業はより苦戦している。しかし、「ニューヨークのディーラーは今静かで、それは現在小売店が在庫を豊富に持っている結果だと思います。」と同氏は説明した。また、「私の感覚では、(消費者の)売上は好調ですが、在庫があるため今は仕入れが減っています。しかし、それは夏の時期にははよくあることです。」と述べた。

RapNetのデータでは、米国の天然ダイヤモンドの在庫は夏の間にわずかに増加している。RapNetに掲載されている米国のラウンドダイヤモンドの数は、特定のサイズ範囲で、3月1日の約21,200個から9月1日の約28,000個に32%増加した(グラフ1参照)。これは、0.30 ~ 0.39、0.50 ~ 0.69、0.70 ~ 0.89、1.00 ~ 1.49、2.00 ~ 2.99、3.00 ~ 3.99 カラット、D ~ M、フローレス ~ I1、RapSpec A3+ のダイヤモンドだ。

グラフ1

しかし、この在庫の上昇はインドに比べたら穏やかだ。インドではこの範囲のダイヤモンドの数は3月1日の約6万石から9月1日には約16万石に急増した。これは、昨年のダイヤモンド原石輸入の自主的凍結後に工場が生産を再開したことによるインドの供給過剰を反映している。両国の在庫レベルの%差は、2年ぶりの高水準に上昇した(グラフ2参照)。米国の取引は、卸業者が商品を選択できるためインドよりも在庫状況が健全だ。

グラフ2

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購入機会

在庫の流動性について、現在の低価格水準が買い手にとってダイヤモンドを即金で手に入れるチャンスを生み出している、とニューヨーク州ロチェスターに拠点を置く卸売業者、RDIダイヤモンドの業務担当副社長アンドリュー・リカードは主張する。

「小売業者が交渉の席に着き、掘り出し物を探している。」と同氏はコメントした。この需要は、ラウンド、オーバル、ラディアント、クッション、マーキスシェイプの 1 ~ 4 カラット、F ~ J、VS1 ~ SI2 のダイヤモンドに集中している、と同氏は述べた。需要に応じてのみ購入する戦略を維持している小売業者は売上を失う可能性があるとリカードは警告した。

「(顧客の特定の問い合わせに応じてメモで)ダイヤモンドを注文するのではなく、在庫を多く保有する小売業者は、その戦略から利益を得ている。」と同氏は付け加えた。「彼らは、軟調な市場を利用して、売れ行きの速いダイヤモンドをより安い価格で購入している」と述べた。

ニューヨークに拠点を置くポリッシュダイヤモンドサプライヤー、ナイス・ダイヤモンドの社長、ニレシュ・シェスは、夏の市場減速以来、ホリデーシーズン前には多少の改善が見られるものの、昨年よりは低い水準だと語る。「小売店は在庫を慎重に発注している。」と同氏は言う。「何か必要なときには、短期の翌日委託に頼っている。」と説明した。

今のところ、現在小売店の需要が低迷している米国でも、第4四半期までには状況が改善するだろうというのが共通認識だ。

「現在の市場をどう考えようと、クリスマス(の商戦)はやって来ます。」とRDIのリカードは断言する。「いずれにせよ、クリスマスシーズンはやって来ます。より準備の整った企業は、これから経験する需要増加をうまく活用できる立場にあるでしょう。」と彼は指摘した。

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