ラボグロウンダイヤモンドの未来 [RAPAPORT Webinar]

7月12日、「ラボグロウンダイヤモンドの未来(原題:What’s Next for Lab-Grown?)と題したウェビナーが、RapaportとIGIの主催によって開催された。

ラボグロウンダイヤモンド(以下LGD)は過去2年間で関心が高っており、多くのジュエリー業者が販売を開始している。しかし、この最近の動きは天然ダイヤモンド業界にどのような影響を与え、両カテゴリーはどのように共存するのだろうか?

このテーマは、IGIによって開催される一連のウェビナーの最初のパートだ。需要、コスト、価格設定、技術の進歩の影響、グレーディング、マーケティングの問題について議論された。

モデレーター
アヴィ・カールワイツ – Rapaport

パネリスト
アヴィ・レヴィ – IGI(鑑定機関)北米責任者
アミッシュ・シャー – Altr Created Diamonds(LGD生産者)社長
マーティ・ハーウィッツ – The MVEye(LGDコンサルティング企業)CEO兼創設者
ニック・スマート – Lightbox(LGDブランド)コマーシャルディレクター

冒頭にモデレーターのアヴィはイノベーター理論のカーブを提示し、LGDが既にこのカーブの商品普及の一つの超える溝であるキャズムを超えていると指摘、現在では業界の多くのセクターでLGDの受け入れが拡大していると説明した。

何がこの業界の変化を促し推進しているのか?

マーティ: 私の見解では、LGDの全体的な推進は消費者によって引き起こされています。なぜなら消費者は自然発生的にLGDを受け入れているからです。全体的(マクロ的)に大きなマーケティングをしなくても、消費者は自発的に店舗やWeb、雑誌などでLGDについて知り、よりそれについて知りたいと考えています。過去2年間で消費者の流れが大きく拡大し、それが多くの小売店が受け入れる推進力になりました。

アミッシュ: 私はそこに2つの側面があると考えています。つまり消費者サイドと販売サイドです。価格に敏感な消費者は現在LGDを選択し始めており、同じ予算でほぼ2倍のサイズのダイヤモンドを手に入れられるようになっています。特にアメリカではこの傾向は顕著です。80%以上のLGD販売はサイズと美しさが動機となっており、これがLGDの根本的な販売要因である為、この傾向は日に日に強くなっています。アメリカのみならずオーストラリア、ヨーロッパなどの市場でも同様です。
小売店にとっては、成約率が上がることがLGD採用の一番の理由となっています。小売店は消費者の予算内で提案できる商品の選択肢を増やすことができ、これによって成約率が高まります。また、利益率も改善できます。小売店にとって利益率が増加し、また消費者はより大きなダイヤモンドを購入して幸せに店舗を後にすることができ、これがLGDカテゴリーを大きな流れにしています。

アヴィ: 消費者、小売店、製造業者がそれぞれが上流をプッシュしているという循環があることを理解する必要があります。

現在のマージンはどうなっているか?

ニック:消費者の多くはLGDを目の前にすると大きな感銘を受けます。つまり製品のクオリティと価格です。消費者は手頃な価格でそれらを購入でき、それがLGD業界を駆り立てている推進力になっていると思います。

LGDの技術発展はどのように影響を与えているか?

アミッシュ:2016年から2018年にかけてHIJKカラーが一般的であったのに対して、現在では小売店はEFGカラーを求めています。消費者の80%以上はLGDの価格メリットに焦点を当てており、サイズとカラーが向上するということは、テクノロジーがLGDマーケットの経済規模を進歩させ、その価値が消費者に受け継がれているということです。現在では1-2cts、Fカラーがコア商品になっています。

アヴィ:IGIに持ち込まれるLGDもこの2−3年で品質の変化がありました。サイズに関しては5ctアップのものも持ち込まれるようになり、そのような美しいLGDを見ることはとても喜ばしいことです。

チェーン店などの大型店にはどのような影響があるか?

マーティ:これは多くの大型小売店にとって、彼らが求める同サイズ同高品質のダイヤモンドと製品を安定的に供給することは挑戦となっています。大きな企業は今や積極的にこのフィールドへ参加し始めており、供給一貫性が彼らの参入にとっての大きな課題の一つになっています。そのような企業は高品質なLGDを安定的に得るためにプレミア価格を受け入れており、いくつかの生産者は既にそのような要望に対応するためにカスタム生産を開始しています。小売店は自社の要求に応じて、品質や生産一貫性などについて一刻も早く最適な生産者を見つける必要があります。なぜなら消費者の需要は急速に進んでおり、今年の第4四半期には需要が生産を大きく上回るとみられているからです。

ライトボックスは非常に異なる品質的アプローチをしているが、これは他の小売店やブランドにも適用できると思うか?

ニック:我々はサイズとグレードに関して一貫した標準化を採用しており、それが消費者にとって明確でわかりやすいコミュニケーションを提供してきたと考えています。消費サイドのデマンドは確かに急速に拡大しており、需要と供給のギャップに関しては議論する必要があると思います。一方で間違いなくかなりの量の生産が行われます。通常CVD生産施設の建設には12-24ヶ月がかかります。現在、インドからの輸出データを見ると毎月1.3億ドルから1.5億ドルの商品が輸出されており、それは以前から大幅な増加となっています。天然ダイヤモンドとLGDの違いの一つは、LGDは生産増加が可能だということであり、需要と供給のギャップはいずれ均一化されるだろうということです。

マーティ:設備投資の問題以外に生産を妨げているのは、適切な技術者が不足していると言うことです。高品質のダイヤモンドは単純に機械から出てくるものではなく、世界をリードする生産者によって、そして非常に高いレベルの人間の科学的知識を必要とします。現在ではそれが不足しているのです。これが、LVMHなどラグジュアリー企業がこのフィールドに参入する前に望んでいることでもあります。

そこには特許の問題があると思うが、もし特許が共有されるのであれば供給ギャップを解消することが可能だと思うか?

アミッシュ:インドと中国は現在LGDの主要な生産国です。中国は現在HPHTの大部分とCVDを生産しており、インドは多くのCVDと少量のHPHTを生産しています。
5mm以下の素材サイズのHPHTは現在全て中国で生産されています。多くのHPHTメーカーは工業用ダイヤモンドの生産から宝飾用ダイヤモンドの生産にシフトしており、利益を上げています。また大きなサイズのHPHTも生産するようになっており、2ctsのポリッシュサイズを得ることのできる原石がインドに輸入され研磨されています。中国でのCVD生産量は相対的に少なく、現在では600台強のマシンが稼働していると考えれられていますが、現在の状況を総合的に鑑みると将来3年間で5倍の規模拡大が可能になると考えられます。
インドに関しては現在2500台のCVDシステムが稼働しており、現在の需要と投資を総合的に考えると今後2−3年で2倍に増えると考えられます。その為全体的に見ると今後数年以内にCVDの生産量は3倍くらいに増えると予想できます。
確かに技術者の問題に関しては課題がありますが、インドの視点から言うとより重要なのは機械の数と規模の拡大スピードです。その拡大によって3−4年以内には7000万ctsの生産量に達すると思いますが、全体的なダイヤモンド業界全体から見るとまだまだ少ない数字だといえると思います。
ほとんどの生産者はPHD(博士号)を持ったスタッフを持っていませんが、システム導入することで生産を拡大しています。中国は独自の開発をしていますが、幾つかのCVD生産者は指数関数的に生産を拡大させています。
様々なデータから読み取れるように消費者のLGDへの関心は急速に高まっており、注目すべき点は今までダイヤモンドを購入していなかった人々が購入し始めているということです。今後3年間で世界市場は更に20−30億ドルの消費市場規模拡大をするでしょう。その為我々のような生産者は卸売業者だけではなく小売店と直接コミュニケーションをとり、彼らの長期的な需要に対する生産によって取引を確立させようとしています。そのため今後取引が大きく変わる可能性があり、例えば特定のチャンバーの生産能力を特定のクライアントの生産に割り当てるという方法で、それにより価格設定が大きく変わる可能性があります。

特に高品質の生産に関しては、科学者の不足が市場の別の側面で課題になると思うか?

マーティ:私は宝飾品質のLGDの市場がまだ初期段階にあり、これが巨大な市場になると考えています。消費者の需要は飛躍的に伸びておりますが、それだけではなく工業的、最先端技術用途などの様々な側面があります。しかしその生産を切り替えるにはチャンバーの交換、6ヶ月ほどの準備期間、そして多くの技術的人的リソースが必要になります。例えば量子コンピューターのための技術開発は非常に素晴らしいものがありますが、その為にはいくつものチャンバーをその為に使用する必要があり、その間そのチャンバーからの利益は得られないことになります。その為多くの生産者は宝飾用LGDの生産に資金を投じています。LGDには様々な可能性がありますが、まだそれは初期段階にあります。高品質なものを生産するのは非常に難しく、誰もが最新のテクノロジーを持っている訳ではありません。

アミッシュ:イスラエルやアメリカで生産されているものが高品質であるというのは感覚的なものです。高い技術を持った生産者が生産するLGDは様々な面で確かに優れた品質になります。しかし、同じ技術で生産されたものはそれがアメリカであれインドであれ中国であれ、科学的には違いがありません。特定の地域のダイヤモンドが優れていて、特定の地域のものが低品質という誤解があるべきではないと思います。

IGIではそれぞれのセンターからのLGDの違いに関してどのように認識しているか?

アヴィ:様々なところから様々な品質のLGDが持ち込まれています。生産の一貫性は向上しており、多くの生産者が生産に注意を払うにつれてそれらは向上しています。品質の低いものから高いものまで様々なレンジのものを我々は見ますが、それは生産者と製造業者による違いがあると思います。天然ダイヤモンドと同様に、企業は適切なサプライヤーを見つける必要があります。我々は確かにまだ初期段階におり、これからまだ長い道のりがそこにはあると思います。

IGIでは製品も評価をしていると思うが、製品の傾向の変化は市場の成熟を表していると思うか?

アヴィ:確かにそれは、商業分野からデザイナーに至るまでのあらゆる分野でのとても大きな発展が見えます。ここ数ヶ月でも大きな発展が見られ、メーカーが新しいコレクションを発表し、LGDを使用した様々なコラボレーションやアイデアが市場に拍車をかけています。業界はそれを非常に促進しており、様々なアイデアを出すことでそれは伸びています。低価格帯から高価格帯に移行し、新たな創造性を提供することによって消費者に新たな価値を提供し始めています。

ニック:LGDの可能性はデザインスペースにあると感じています。特にジュエリーに関してのデザインとイノベーションは、個性的で新しいLGDの製品の可能性を探求することで、それが消費者の関心を高めるでしょう。デザイン、カット、カラー、シェイプなども可能性があり、これに我々は大きな可能性を感じています。

LGDと天然の両方を使用したジュエリーに関して消費者はどう反応するか?

アミッシュ:ブライダルジュエリーなどのジュエリーでは、その製品の価値はセンターダイヤモンドにあると考えられています。多くの店舗ではセンターストーンと枠を選んでセッティングします。2016-2018年のLGD初期においては、消費者の誰も天然ダイヤモンドとLGDを混在させることについて全く抵抗がなかったと思います。現在、LGDでブライダルジュエリーを作るメーカーの参入が昨年から増えてきていると思います。2016年から2019年までメレサイズのLGDの需要は非常に低かったですが、現在では非常に増加しています。その為メレサイズの過去1年での価格は70%増加しています。需要が倍増した為です。消費者は最初から天然とLGDのジュエリーとしての混在に抵抗がありませんでしたが、現在では全てをLGDで生産したブライダルジュエリーに進化しています。そしてそれはファインジュエリーなどのカテゴリーにも進化しています。また現在ではデザインカットダイヤモンドが現れてきています。LGDダイヤモンドはデザインカットダイヤモンドの供給を可能にするからです。

ニック:天然とLGDを混在させる場合に課題となるのは、その情報をどのように消費者に開示するかということです。消費者がそれを購入した際に、どれが天然ダイヤモンドでどれがLGDなのかを明確に理解している必要があります。

アヴィ:開示は非常に重要であり、それが我々が取り組んでいることの一つです。ほとんどの企業は、それが意図せず混入されていないことを確認したいと思っています。我々はレポートにそれを記入しているので、消費者はどのようなものが使用されているかを知ることができます。

LGDメレが天然メレの市場に影響を与える可能性はあるか?

マーティ:透明性の問題と管理の連鎖性の問題は非常に重要だと考えます。我々は消費者に対して、その商品が高い透明性の第三者認証を受けていると言う必要があると思います。
一方で、この市場の増加の中でLGDが天然ダイヤモンド市場を共食いしているというようなものは見られていません。LGDが新しい消費者のパイを拡大していると言う現象が見られるからです。消費者は店にやってきて、LGDや天然ダイヤモンドどちらも購入することがあり、市場規模を拡大させています。メレが市場を共食いしていると言うことに関しては心配する現象ではないと考えています。現在多くの生産者はLGDメレの需要が増加し価格も増加しているため、CVDメレを生産し始めています。天然ダイヤモンドのメレより高品質で見た目に一貫性のある品質のメレの提供を可能にし、これによって消費者にとって価値の高い商品を提供し、またジュエリーメーカーにとって大きな可能性を提供します。CVDメレは現在価格が高くまた入手が難しいですが、一貫性の高い生産が求められています。

ニック:我々は大きなサイズに焦点を当てており、CVDの生産優位性の一つは大きなサイズにあります。

LGDと天然の共食いについて今後どのようになると思うか?

アミッシュ:消費者が何を選択するかと言う問題だと思います。カップルが婚約指輪を購入する際は、両方ではなくどちらかの商品を選択します。データによると、LGDを採用している小売店のうち1/3の売上の50%以上はLGDになっています。また2022年の上半期のデータによると、天然ダイヤモンドのエンゲージメントリングの売上は2桁下がっているのに対して、LGDのエンゲージメントの売上は増加しています。もちろんこれは母数が小さいため割合としては大きく見えるわけですが、これは共食いをどの視点から見るのかによって変わってくると考えられます。エンゲージメントリングであれば、彼らは2つではなく1つを購入するのです。しかしダイヤモンドブレスレットを例にとってみると、今までそれに興味がなかった人に追加の売上を発生させる可能性があるということです。今までダイヤモンドを買わなかった消費者がダイヤモンドを購入するようになっており、これがダイヤモンド全体の売上を増加させています。より広いマーケットが期待できるのでジュエリー市場全体の消費量は増加していきます。しかし最終的にはそれぞれの市場が形成されていき、それぞれが独自のマーケットシェアを築くでしょう。しかし最終的にそのバランスを決定するのは消費者です。
また、経済的不安から多くの消費者は価格をより重視するようになってきています。その為過去にはLGDを採用していなかった多くの小売店が今ではLGDを販売し始めています。そして一度LGDを購入した消費者はその後もLGDを購入し続けるようになります。2ctsの美しいペアシェイプのダイヤモンドを購入した消費者は、半分のサイズの天然ダイヤモンドにより多くの金額を使おうとは思わず、これは我々が今まで実際に見て来たことからわかっています。

消費者にとっての天然ダイヤモンドとLGDの違いは何か?

アミッシュ:多くの人々にとっては価格の違いですが、少数の消費者にとっては環境的また社会的な影響に対する考え方があります。しかし80%以上の消費者にとって重要なのはサイズです。予算の中でより大きく高品質なダイヤモンドが手に入るということです。

ニック:私は天然ダイヤモンドをバックグラウンドとして多くの天然ダイヤモンド原石を見てきましたが、それらは非常に美しいものです。特に高品質の大きな天然ダイヤモンド原石は比類なく素晴らしいものだと思います。現在私はLGD分野で働いており、この技術を高く評価しています。これらはハイテクで素晴らしいものですが、これらは根本的に異なるもので、高品質の天然ダイヤモンドは希少性があります。LGDでは同じものを安定的に生産できるかもしれませんが、これは同じものではないので最終的には消費者自身の選択になるのだと考えています。
私は、これをどのように消費者に説明するかが業界にとっての大きな課題であると思います。これらが全く同等であると説明するのは間違いだと思うと言うことです。ダイヤモンドが手元にたどり着くまでの道のりは非常に大きな違いがあります。どちらも素晴らしい商品ですが、それは異なるものであり、知識を持った消費者が選択すべきものだと考えます。

価値について話すとき、それは価格の側面を示しているか?

アミッシュ:ダイヤモンドは投資価値があるのかという議論があります。これは今世紀最も成功したマーケティングの一つで、ダイヤモンドを購入すると価格が上がり続けると人々は信じさせられています。しかし、ダイヤモンドの価値は価格とは大きな違いがあります。価格とは消費者がレジで支払う金額であり、価値とはそれが何であるかということです。投資対象になるダイヤモンドはおそらく世界生産の1−2%です。小売店では天然ダイヤモンドの価格が上がると説明しますが、そのダイヤモンドが本当に取引価値を持っているものであれば、それを小売店で購入した後に他の場所に持って行ってもほぼ同等の価格で買い取られるはずです。しかしそうはなりません。なぜならレジで支払っているのは価値ではなく価格だからです。現在の消費者はそれが価格であることを理解しています。その価格は、製品、サービスなどのすべてのものを含んでいるのです。

マーティ:この、ダイヤモンドが希少で価値が上がり続けるというマーケティングは1938年にオッペンハイマーによって始められ、信じられないほど強力な影響を持って米国と世界中に拡散しました。しかし、ジュエリーの価値はそれをプレゼントする人間の感情的な価値です。我々は投資ビジネスを提供しているのではありません。商品の心理的な価値はその商品の価格または投資価値とは関係がないのです。そして業界は、今後も繁栄を望むのであればそれを正直に消費者に説明するべきです。

ニック:天然ダイヤモンドとLGDは希少性において全く異なっており、同じ4Cグレードを提供することが消費者にとっての混乱を引き起こす可能性があります。いずれLGDの生産は全てトップ品質になるでしょう。ライトボックスは常に線形の価格構造を採用しています。希少性によって決定される天然ダイヤモンドの価格体系を参照に使用することは消費者にとては誤解を招く恐れがあると考えています。

マーティ:Rapベースの価格設定から離れる必要があると思います。LGDは独自の価格マトリックス体系を創造するべきです。

アヴィ:消費者はそのダイヤモンドのグレードが何であるかを正確に知ることを望んでいます。しかし全てのダイヤモンドがF VVSアップになるならそれは他のアプローチになる可能性があります。

本編ではより深い興味深い議論がなされた。アーカイブは以下より視聴可能。

コメント

タイトルとURLをコピーしました