ダイヤモンド原石の減少はポリッシュダイヤモンドの高騰を招く

今後、ホリデーシーズンに向けて需要が増加し始めると、第3四半期後半に市場のダイヤモンド在庫が減少し市場に影響を与える可能性がある、とRapaport Research Reportは6月号で指摘している。

RapNetには大量のダイヤモンド在庫が載せられており、現在はポリッシュダイヤモンドの在庫は不足がないように見えるが、年末に向けてホリデーシーズンの需要が増加するとポリッシュダイヤモンドの市場在庫は少なくなってくるとメーカーやディーラーは予測している。

この予測される在庫の減少は、需要の増加によるものではなく、主にロシア産の原石が3ヶ月間制限を受けていることによる供給の不足によるものだ。しかし、いくつかの要因が最終的な結果に影響を与える可能性があるという。

アルロサからの原石は再び市場に流入し始め、ウクライナとの戦争が激化し続けているにもかかわらず、今後数ヶ月でより多くなると予想されている。

ロシア鉱山(アルロサ)から供給には、現在の生産、制裁に関連した支払い問題、出荷制限、およびロシアの状況に関する製造業者の不確実性のために3月11日以降販売できなかったものが含まれる。

米国はロシア産ダイヤモンドの輸入を禁止しているが、他の国、特に中国とインドは禁止していない。したがって、ポリッシュダイヤモンドのサプライヤーはロシア産ダイヤモンドの市場を持っている事になる。それらサプライヤーは製造段階で、ロシア産とそうでないものを分離する必要があり、また全てのダイヤモンドの出生地を文書化し、開示して確認する必要がある。

この分離によって市場は二つに分かれ、制裁が実施されている米国と、独自の倫理基準を実施したハイエンドブランドにとって供給不足を引き起こすことになる。また、ロシア産のダイヤモンドが許可されている他の市場にとっては供給過剰につながる可能性も示唆される。

そのため、プロバンスプレミアム(原産地の証明による価格プレミアム)は取引で有効になり始めている。デビアスは直近の2021年ダイヤモンドインサイトレポートで、消費者は責任を持って調達されたダイヤモンドやジュエリーに多くのお金を払う意思があると指摘したが、それが企業間環境でどのように機能するのかは不明だった。

新たなロシア産原石からのポリッシュダイヤモンドは、原石を加工し、出来上がった商品を在庫として販売するための準備に2〜3ヶ月かかるため、第3四半期の終わりに市場に参入し始める可能性が高いと見られている。その後、ディーラーや製造業者は、アルロサから低価格で原石を仕入れが可能性が高いのでその原価に従って、またさらに重要なことに、世界のダイヤモンドジュエリー需要の半分以上を占める米国市場で販売できないため、それらのダイヤモンドを割引価格で販売すると考えられている。

逆に言うと、同じディーラーやメーカーがロシア産でない(と証明できる)ダイヤモンドをプレミアム価格で販売し始める可能性があるということだ。これは、大きな市場である米国、そして欧州市場で責任を持って調達されたダイヤモンドの需要が高くなると考えられ、また米国の小売業者がアルロサからの原石の供給の不足によって(彼らの市場にあった)商品の調達が不足する可能性が高いからだ。これにより、今年の中間点に近づくにつれて市場は縛られていくことになる。

このような予測されるシナリオの中でビジネスをどう進めていけるだろうか。その答えは、ビジネスを行うマーケットと世界の状況に大きく依存する。ダイヤモンドのパイプライン(供給ライン)は世界を股にかけ、また価格は世界市場によって左右されるため、ロシアウクライナ戦争による世界のダイヤモンドマーケットの混乱は日本のジュエリー業界にとっても決して対岸の火事ではないのだ。

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