ティファニーは中国ECモール『京東』に公式ショップをオープン、ブランドはオンライン販売に注力

アメリカのハイジュエリーブランド「ティファニー(Tiffany & Co.)」は2月10日、中国の大手ECモールである「京東(ジンドン)」に公式旗艦店をオープンした。ティファニーチャイナが第三者ECプラットフォームにショップを設置するのは初めてのこととなる。それまで、中国国内のティファニーのオンライン小売チャネルはブランド公式サイト(中国語)と、同社のWeChatミニプログラムだけだった。

ティファニー京東公式旗艦店はブランドの全ラインナップを販売する。ジュエリー、ホーム、アロマ、スキンケアなど全てのラインが含まれている。検索欄に「蒂芙尼(ティファニー)」や「Tiffany」と入力するとティファニー公式旗艦店に直接ジャンプする仕様だ。京東の通常ページのイメージカラーが赤と白を基調としているのとは異なり、ティファニー京東公式旗艦店のページはティファニーブルーが基調となっており、ティファニー公式サイトやWeChatミニプログラム内のページと統一感を持たせている。

ティファニーは公式リリースで「デジタル化発展の新しい章として、ティファニー京東公式旗艦店はブランドの中国市場での展開を深化させるだけでなく、消費者のショッピング体験をさらに豊かにするだろう。」と述べた。

ベインアンドカンパニーが最近発表した「2022年中国ラグジュアリー市場」の報告によると、2022年に全世界で最も購買力のあるトップ2%の顧客が世界ラグジュアリー商品の約40%の売上を占めており、この率は2021年よりも5%上昇している。この部分で消費貢献と頻度が高いVIC(Very Important Customer)はブランドにとって経済下降期の収益の柱となる。

ブランドのオンラインチャネルに関してベインは、このVICもオンラインでラグジュアリーブランドを買う主力軍だと指摘した。中国の別のECであるTmallのラグジュアリープラットフォームを例に挙げると、1年間で3回以上購入した顧客が売上の半分以上に貢献しており、オンラインショッピングで最も急速に成長している消費者グループになっている。

中国市場のもう一つのVIPの特徴は、すべての大手ブランドのVIC集中度がほぼ同じだということだ。これは、まだオンラインチャネルに注力していないラグジュアリーブランドにとって、中国国内のオンラインチャネルに依然として十分な成長性があることを意味している。特にジュエリーや時計など、オンラインチャネルの浸透率が相対的に低い商品に対して言える。

データによると、中国国内でのジュエリーと時計の現在のオンラインチャネルの浸透率は10%から15%程度で、オンライン浸透率が最も高い化粧品類はすでに50%に達している。オンライン浸透率が高い化粧品類は市場が悪い時でも相対的に影響を受けづらいという。

そのため、ラグジュアリージュエリーブランドにとって中国市場でのオンラインチャネルへの注力が重要になってくる。

ティファニーが今回京東で旗艦店をオープンしたのは、同じLVMHグループに属するブルガリの方法と一致する部分が多い。

2021年8月、ブルガリも京東で初の第三者ECモールの公式ブティックを開設した。消費者は京東ホームページでブルガリの名前を検索すると、京東アプリに内蔵されているミニプログラムホームページに直接アクセスできる。

京東で開店して半年後、ブルガリはTmallに2番目の第三者ECモール旗艦店を開設した。2022年4月、ブルガリはTmallに公式旗艦店を開設、その形式は京東ブティックと似ていて、検索エンジンで検索すると直接ブランド店舗のホームページにジャンプする。ページのビジュアルはブランド用にカスタマイズされている。京東とTmallではブルガリの全品目がラインナップされており、新発売商品と独占商品だけに違いがある。

ティファニーが将来的にブルガリ同様Tmallにオープンするか、または他のECプラットフォームにオープンするかは今のところ不明だ。しかし、過去2年間のラグジュアリーブランドのECモール出店ペースから考えると、ブランドが京東かTmallという二大モールの「二者択一」で出店しているモデルは過去のものになっているように見える。

2021年4月から現在まで、ティファニーとブルガリ以外にも、ルイ・ヴィトン、フェンディ、セリーヌ、ベルルッティ、マックスマーラ、ロジェ ヴィヴィエ、メゾン マルジェラ、マルニ、メゾンキツネ、キーリン、ランバンなど多くのラグジュアリーブランドが京東でブティックを開設しており、またクリスチャンルブタンビューティー、ボビーブラウン、ラ プレリー、ラ メール、アルマーニ ビューティー メイクアップ、ジョー マローン ロンドン、資生堂などのハイエンド化粧品ブランドも出店している。

現在世界最大のラグジュアリーグループであるLVMH傘下の9大ラグジュアリーファッションブランドと2大ラグジュアリーブランドが京東に開店ており、数量ではTmallのラグジュアリーをを上回っている。ルイ・ヴィトンとティファニーはまだTmallには出店していない。

トップのラグジュアリーブランドが京東にオープンするにつれ、ラグジュアリー業界の京東に対する態度も緩やかに変化してきた。2021年4月にルイ・ヴィトンが初めて京東に開店した際には、ラグジュアリーブランドがこのECモールに出店するということに対する周囲の見方は今に比べ、冷ややかで保守的だった。またラグジュアリーーブランドも京東のラグジュアリーモールに対して様子見の態度をとっていた。一方で長年ラグジュアリーカテゴリーに注力してきた京東は、そのカテゴリーへの取り組みが積極的で情熱的なものだった。

現在、ラグジュアリーブランドが自ら京東に出店することを積極的に発表しており、これは京東と協力してショップをECモールに開店する意味がブランドにとって大きいことを示している。

Bealead Consultingの創設者であり、小売EC業界のアナリストであるZhuang Shuaiは「京東の自営サービス、成熟されて規模が大きい京東PLUS会員システム、オフライン実店舗をつなぐ京東到家と京東アワーショッピングプラットフォームなど全てが差別化されており利点となっている。」と語った。

 「京東PLUS」は、2016年1月より運用を開始した有料会員プログラムで年間198元(約3,800円)の年会費で「ポイント10倍バック」や「年間360元の配送費減額」、「毎月100元の割引チケット」等、計10種のメリットを享受することが出来る。

京東グループの2022年第3四半期の財務報告によると、2022年7月までに京東PLUS会員数は3000万人を超えた。毎年京東に年会費を支払ってでもより良い会員サービスを受けたいと思うこれらの消費者は、疑う余地なくラグジュアリーブランドがターゲットにするべきグループだ。

サービス面では、京東はラグジュアリーブランドに対してブランドの世界観と自主性を最大限維持できる方法を提供する。つまり、ミニプログラムのようなECページを提供する。これはブランドがテクノロジーや支払いなどのレベルで京東の「インフラ」を使用することを意味するが、消費者に他のオンラインプラットフォームと同じレベルのサービスを提供することができる。たとえば、ラグジュアリーブランドの京東ストアで消費者が購入した商品は、JD Logistics ではなく、SF Express によって配送されるなどだ。

京東独自のマーケティングリソースは、他のプラットフォームではリーチしにくいユーザーにリーチするのにも役立つ。これは、ラグジュアリーブランドがEコマースチャネルを多様化する基本的な動機でもある。

ティファニーは公式プレス リリースで次のように述べている。「ティファニーは京東小魔方、特物Z、京東新百貨店スーパーブランドデイなどの京東の特色あるマーケティング資源を利用して、重要なプロモーション ノードと新製品リリースの機会による斬新な相互作用により、消費者のためのより豊かなコミュニケーション シナリオとユニークなショッピング体験を構築します。」

日本市場ではラグジュアリーブランドが大手ECモールに出店している例はほとんどない。それはECモール側がブランドイメージを維持できる状態での出店に対応していない、日本の消費者がラグジュアリー商品をネットで購入することへの抵抗感が大きいなどの理由があるだろうが、会員の囲い込みと多彩なプロモーションを実施できるECモールとラグジュアリーブランドのコラボレーションは大きなシナジーを生み出せる可能性が高い。

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