グラファイトと水素、偶然の邂逅が示すダイヤモンドの神秘

GIAは先日、別々に鑑定依頼された二つのダイヤモンド内部に、偶然にも類似した星形のインクルージョンを発見したと発表した。一方はグラファイト、もう一方は水素クラウドに起因するものであり、見た目の類似性とは裏腹に、その成り立ちは全く異なる。この発見は、天然ダイヤモンドが持つ無限の多様性と、一つ一つの石に秘められた独自の物語を改めて浮き彫りにする貴重な事例だ。
前例のないグラファイトの「星」
最初のダイヤモンドは、ジンバブエ産の3.45カラット。部分的にファセットが施され、ガードル部分には原石の表情が残る個性的な一石だ。GIAの季刊誌「Gems & Gemology」秋号によると、この石の内部には、暗色の微小なインクルージョンが形成する、星彩効果(アステリズム)を彷彿とさせる6条のローブ(葉状)を持つ星形のパターンが確認された。
GIAは目視検査の結果、この星形パターンはグラファイト(石墨)の集合体によって形成されたものと結論付けた。ダイヤモンドの内部に星形や三角形のインクルージョンが見られること自体は稀ではないが、GIAは「中央の六角形の図形から外側に向かって放射状に広がるグラファイトのクラウドは、これまでGIAが目にしたことのないパターンだ」と述べ、その希少性を強調した。
放射性流体の痕跡を持つもう一つの「星」
一方、二つ目のダイヤモンドは13.89カラットのファセットカットされた大粒の石だ。こちらも暗色の微小なインクルージョン群が特徴的だが、その原因は水素クラウドであった。含有されるニッケルにより、長波紫外線を照射すると緑色の蛍光を発する特性を持つ。
さらに興味深いのは、インクルージョンのない透明な領域を貫通するエッチチャネル(蝕像)の存在である。GIAは、このエッチチャネルが、ダイヤモンドがまだ地中にあった時代に、放射性の流体が侵入した痕跡である可能性を指摘している。
類似性と相違点が物語るもの
GIAは、「これら二つのダイヤモンドは、類似した赤外線スペクトル、放射線による着色(radiation staining)、そして暗色の微小インクルージョンの存在という点で共通している」としながらも、「その特性の現れ方は全く異なる」と分析する。
見た目は共に「星」を想起させるが、その正体はグラファイトと水素クラウドという全く別の物質であり、生成過程も大きく異なる。この事実は、宝石の内部特徴の視覚的類似性だけで、その起源や生成環境を断定することの難しさを示唆している。インクルージョンは単なる欠点ではなく、そのダイヤモンドが地球の深部で経験した数十億年の歴史を物語る「指紋」であり、その独自性が価値を左右する現代において、極めて重要な情報源となる。
GIAは報告の締めくくりとして、「これらは、すべての天然ダイヤモンドがそれぞれ独自の旅路と起源の物語を持っていることを示す、また一つの例である」と述べている。偶然GIAのラボにもたらされた二つの「星」を持つダイヤモンドは、我々にダイヤモンド鑑定の奥深さと、一つとして同じものはない自然の芸術品を扱うことの感動を改めて教えてくれる、示唆に富んだ発見と言える。
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