タイムズ・オブ・インディアは最近発表した記事で「インドのディワリ休暇中、ラボグロウンダイヤモンドの市場需要が急増する」と指摘し、今年の第4四半期に市場が拡大すると述べた。
現在、主要市場であるアメリカに加え、生産国であるインドの消費市場にもラボグロウンダイヤモンド製品が拡大している。この現象の背後には、機会とリスクと見なすことができる2つの傾向がある。ひとつは、大粒のルースの卸売価格が引き続き低下すること、もうひとつは、ダイヤモンドに対する消費者の概念が変化していくということだ。
大粒ルースの価格低下
価格の観点で見ると、現在米国の1カラットのラボグロウンダイヤモンドの小売価格は1,000ドル前後だ。卸売価格に関しては3カラット未満のサイズの価格傾向は安定し始めている。しかし、より大きなサイズのラボグロウンダイヤモンドの価格は更に下がることが予測されており、これは天然、ラボグロウン含むダイヤモンド市場全体に圧力をかけることになる。
タイムズ・オブ・インディアは、今年天然ダイヤモンドの卸売価格が30%~40%下落した主な理由の一つは、ラボグロウンダイヤモンド市場の大規模な拡大であると考えている。
しかし別の観点から見ると、価格が引き下げられたことにより小売業者やブランドは顧客を惹きつけるためにより豊富なデザインや新しい手法を採用するようになり、客観的見ると消費者市場により多くの選択肢が提供されるようになったと考えられる。
「ダイヤモンドの夢」と「共通認識」
ラボグロウンダイヤモンドの拡大に直面しても、消費者はそれ以前と同じようにダイヤモンドへ夢を抱くのだろうか?
ファロスビームコンサルティングのプラナイ・ナルベカルは今年8月にこの問題についての考えを述べ、それはその後多くのメディアで引用された。彼は、この「夢」の定義は消費者がダイヤモンドを追求する価値のあるものだと考えるかどうかだと述べる。
ラボグロウンダイヤモンドの出現によって、この「夢」が崩れてしまうのではないかと考える人もいるが、社会意識が進化し続ける現代において「夢」も進化し続け、「追い求める価値のある」内容もまた変化し進化していく。
たとえば、デビアスは以前はダイヤモンドを愛と結びつけることに集中していたが、現在は成長、自己肯定、コミットメントと結びつけることを試みている。
また別の例として、以前は「ダイヤモンド」は「投資」という視点で捉えられていたかもしれないが、今は「消費」という視点で捉えられている可能性もある。もちろん一部の天然ダイヤモンドには投資価値があるが、ここで重要なのはそれとは異なる、消費者の概念の変化だ。
他の多くの消費財業界と同様、ダイヤモンド業界の需要と供給の関係は経済環境要因に加えてこの「共通認識-消費者概念」の規模にも大きく依存する。以前は「永遠の愛の象徴」がダイヤモンドの巨大な世界的共通認識を形成したとすれば、現在ではラボグロウンダイヤモンドの出現によりまた別の異なる概念が形成されている可能性がある。
タイムズ・オブ・インディアはリアル・イリュージョンのCEO、アヌプ・ザベリの言葉を引用した。「人々はもはやダイヤモンドを投資としてではなく、自分を満足させるための手段として見ているため、ラボグロウンダイヤモンドの需要は高まっています。」
彼の言及した「人々」とはもちろん消費者の全てを代表するものではなく、一部の人々について述べられたものだ。しかし、新たな消費者認識を生み出すのはいつでも一部の人々からだ。
天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの2つの市場は調和し共存することができる。なぜなら、同じ消費市場には2つまたはそれ以上の相互に独立し重複する概念が同時に存在できるからだ。異なる「概念のサークル」に所属する人々はお互いを排除しようとしたり攻撃したりすることもあるかもしれないが、個々の利害を脇に置けば2つの概念はダイナミックな調和を保つことができる。
例えばインドのメディアでも、天然ダイヤモンドを支持するメディアや記事とラボグロウンダイヤモンドを支持するメディアや記事が多数存在するのはこのためだ。米国であってもラボグロウンダイヤモンドを強く支持する声もあれば天然ダイヤモンドを強く保護しようとする声もある。したがって、自分の概念とは異なる別の概念の意見を見て憤る必要はない。新しい消費者概念の誕生は、時代の進化、科学技術の発展、また世界の政治情勢、経済状況の変化によって誕生するからだ。
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