揺らぐ評価基準の中、消費者利益を優先する姿勢を明確に

IGIは、ラボグロウンダイヤモンド(以下、LGD)に対しても、天然ダイヤモンドと同一の厳格な4C基準による鑑定を継続する方針を改めて表明した。業界内でLGDの評価基準を簡素化したり、鑑定そのものを取りやめたりする動きが広がる中、IGIは「中立的な第三者認証機関」としての使命を貫き、消費者に正確で一貫した情報を提供することの重要性を強く訴えている。
消費者信頼を軸とした確固たるIGIの姿勢
IGIは最近発表した声明で、「天然かラボグロウンかにかかわらず、すべてのダイヤモンドに普遍的な4Cグレーディングを適用し続ける」と断言。この背景には、他の主要な鑑定機関による方針転換がある。
GIAはLGDの品質評価を「プレミアム」「スタンダード」といった大まかな用語に変更し、詳細な4C評価を取りやめた。また、ベルギーのHRD AntwerpはルースLGDの鑑定書発行業務からの撤退を決定している。これらの動きは、天然とLGDを明確に区別しようとする意図がある一方で、消費者にとっては品質を詳細に知る機会を狭めることにも繋がる。IGIは、こうした「LGDに対する希薄化された基準への移行」という業界の大きな変化に対し、明確に異を唱えた形だ。

なぜ4Cが重要なのか?IGIが貫く「消費者の知る権利」
IGIが天然ダイヤモンドと同じ4C基準にこだわる理由は、消費者の利益を最優先するその理念にある。ダイヤモンドの価値と美しさを構成する4C(カラット、カラー、クラリティ、カット)は、消費者が品質を客観的に比較・判断するための世界共通の言語だ。
LGDは物理的・化学的に天然ダイヤモンドと同一でありながら、その品質には個体差がある。これを「プレミアム」といった包括的な言葉で括ってしまうと、消費者はその範囲内での品質の優劣を判断できない。カラーが最高ランクのDなのか、それともFなのか。内包物の状態がVVSなのかVSなのか。その差は美しさだけでなく、価格の妥当性を判断する上でも決定的に重要だ。
IGIは、「設立以来、外部からの影響を受けない、不偏不党の独立した第三者認証機関としての使命に揺るぎなく取り組んできた」と述べており、一貫した基準の適用こそが、消費者に正しい情報を伝え、公正な取引を保証する役割を果たすと確信している。
LGD市場のリーダーとしての責任
IGIにとってLGD鑑定は、事業の根幹を成す重要なセグメントだ。同社の第1四半期の収益報告によれば、ルースLGDの鑑定事業は全体の54%を占め、ビジネスの成長を牽引している。LGD市場におけるリーディングカンパニーであるからこそ、その品質評価の透明性を守る責任は大きい。
日本でIGIと提携している一般社団法人日本ラボラトリーグロウンダイヤモンドの代表理事・伊藤拓也氏は、このIGIの声明に関して「LGD業界が共通の基盤に立ち、消費者との共通言語ともいえる普遍的な品質基準に基づいて情報を開示していくことは、市場全体の信頼性を確立し、業界の健全な発展を促すうえで極めて重要だと考える」と述べ、IGIの方針に対する支持を示した。
IGIのこの揺るぎない姿勢は、日本のジュエリー業界にとっても極めて重要な示唆を含んでいる。LGDが市場の選択肢として定着しつつある現在、その品質をいかに誠実かつ明確に消費者へ伝えるかが、業界全体に問われている。鑑定とは本来、業界の都合ではなく「消費者ファースト」であるべきものであり、真に価値ある情報とは、選択に資する透明で中立的な基準に基づいて提供されるべきだ。天然ダイヤモンドとLGDの差異は本来、言葉遊びや定義づけではなく、それぞれが持つ特性や価値を正しく伝える姿勢が重視される必要がある。「天然 vs LGD」といった対立構造を超え、両者がそれぞれの市場価値を認め合いながら共存・発展していくという視点が不可欠だろう。IGIが示す一貫した方針は、こうした未来に向けた信頼構築の道筋を示している。
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