Diamond Foundry、半導体工場への賭け

2026年2月1日、スペイン紙El Paísは、米国のラボグロウンダイヤモンド企業、Diamond Foundryがスペイン北東部サラゴサにおいて総額10億ユーロを投じ、半導体向けチップ工場を建設する計画を進めていると報道した。

報道によれば、本投資はスペインにおけるチップ関連分野では過去最大級の単独投資案件の一つとされ、約300人の直接雇用を創出する見通しだ。ラボグロウンダイヤモンドの製造企業として知られるDiamond Foundryが、なぜ半導体産業に巨額投資を行うのか。

Diamond Foundryは、ラボグロウンダイヤモンド分野において高い技術力とブランド認知を持つ企業であり、同社の株主の一部にはハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が名を連ねていることでも知られている。環境配慮やサステナビリティを前面に出した同社の姿勢は、これまで主にジュエリー市場で評価されてきた。

今回の投資計画は、アラゴン自治州の州首相ホルヘ・アスコンが2026年2月1日に正式に発表した。同氏はこの計画を「極めて先端的な取り組み」と表現している。新工場は、医療機器大手ベクトン・ディッキンソンが注射器工場として建設を予定していたものの、2024年8月に中止された既存施設を転用する形で設置される予定だ。

サラゴサ工場は、Diamond Foundryがすでに拠点を構えるスペイン・トルヒーリョの既存工場を補完する役割を担う。トルヒーリョでは、同社はダイヤモンド単結晶の製造を行っており、スペイン政府系のSEPI Digitalを通じた公的支援も受けている。一方、サラゴサ工場は宝飾用途ではなく、半導体用途に不可欠な「ダイヤモンド・ウエハー」の製造に特化する点が最大の特徴だ。

ダイヤモンド・ウエハーは、次世代半導体における戦略的中核部材と位置付けられている。ダイヤモンドはシリコンと比較して熱伝導率が桁違いに高く、電子損失が少なく、耐電圧(ブレークダウン電圧)にも優れる。このため、人工知能(AI)、高速通信、パワーエレクトロニクス、さらには量子コンピューティングといった最先端分野での応用が期待されている。

この動きが示すのは、Diamond Foundryが自社の中核技術を「宝飾用途のラボグロウンダイヤモンド製造」に限定していないという事実だ。同社にとってラボグロウンダイヤモンドとは、天然ダイヤモンドの代替素材ではなく、高機能材料として産業構造そのものを変え得る戦略資源である。

ラボグロウンダイヤモンドは、消費者市場においては価格面での優位性が強調されがちだ。しかし本質的には、工業研磨材、光学部材、電子デバイス、量子技術など、多様な用途に展開可能な先端材料でもある。その中で、ジュエリーは数ある応用分野の一つに過ぎず、必ずしも最も戦略的価値が高い用途とは限らない。

Diamond Foundryの今回の判断は、「ダイヤモンド=宝石」という固定観念から脱却し、技術と資本をより成長余地の大きい領域へと再配分する試みと見ることができる。ラボグロウンダイヤモンドの未来は、ショーケースの中だけで決まるものではない。半導体工場という全く異なる現場で下されたこの「戦略的賭け」は、そのことを雄弁に物語っている。

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